野球クロスロードBACK NUMBER
最下位予想を覆した2019年の楽天。
現れた救世主、石井一久GMの慧眼。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2020/01/04 11:40
前半戦を欠場した則本昂大も、復帰後はさすがの投球を見せた。来シーズンはフル稼働を心に誓っていることだろう。
浅村栄斗は自己最多の33本塁打。
足並みを揃えるように、浅村栄斗も自己最多の33本塁打を放った。彼もまた、今季の楽天を語る上で欠かせない救世主のひとりだ。
FA移籍1年目での30発以上は、巨人に入団した選手以外では彼が初めてなのだという。しかも、4人目と意外に少ない(日刊スポーツ調べ)。
チーム唯一のフル出場。出塁率も3割7分2厘と高いのは、それだけチームプレーを意識していた証拠だし、ベストナイン、二塁では初めてゴールデングラブ賞にも輝いた。なにより、「結果が出せないなかでもファンの方が声援を贈ってくれて嬉しくて。でも、それが苦しくて」と、重圧のなか戦い抜いたことが尊い。
だから、去年から打率が大幅に落ちただの、三振がリーグ最多だの、そんな文句は受け付けません。
3位は納得だが、満足ではない。
ふたりだけでなく野手は満遍なく頑張った。
特にROOKIES。
ドラフト1位の辰己涼介が、チーム唯一の2桁となる13盗塁を記録。でも、「もっとできたんちゃうかな」と貪欲。元横浜高校監督の渡邊元智を祖父に持つ佳明も、トップの得点圏打率3割9分3厘。「爪痕を残せたと思う」と満足。
捕手の太田光(ひかる)は、250回以上の守備機会があった選手では12球団1位の捕手防御率3.22。このオフには、爆笑問題の太田光(ひかり)のラジオ番組で初共演する充実。明日、今日よりも好きになれる。どうか来年も、そんな日々をファンに提供してください。
チーム防御率同様、打率もリーグ2位タイの2割5分1厘。3位の要因は数字にもしっかりと表れていた。有識者のみなさん、お分かりいただけただろうか?
「いやいや。3位になれたのか、3位にしかなれなかったのか? というところです。そこをもう一度、選手たちに考えてほしい」
石井一久GMが念を押す。
ぶっちゃけ、ファンの多くはこの順位に納得しているだろうが、石井GMはさらに上を見据えていた。「中長期的に強くなるチーム作り」を、'19年シーズンから着手していたのだから頭が下がる。