プロ野球亭日乗BACK NUMBER
セ指名打者、FAの人的保障廃止……。
原監督の提言と球界の事なかれ主義。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/12/20 19:00
セ・リーグでの指名打者制度導入やFAの人的保障制度廃止を訴えた巨人・原監督。球界で議論は深まるか。
代償として他の選手が“犠牲”になる。
またFAの人的補償については、より明確に現行制度には改革の必要性があるはずだ。
選手が長い年月をかけて手にした権利を行使すると、その代償として他の選手が“犠牲”になる。人的補償は1人の権利を保障するために、他の1人の選手の権利を奪う制度でもあるのだから、やはり何らかの方法で改革の道を探るべき問題だろう。
原監督の提言では、金銭補償を軸にしたものだったが、人的補償に代わる方法論はそれだけではないはずだ。
1つのやり方としてはメジャーリーグ(MLB)のように次年度のドラフトの指名権を引き換えにするという手もある。そのときに果たして1位のドラフト指名権が適切なのか? 2位指名や3位指名の権利で選手を出す球団は納得できるのか? それとも金銭補償をプラスするならその金額をどれくらいにするのか?
そうした妥協点を探す努力は、今後の選手の権利を守っていく上でも、球界の活性化という点でも、真剣に討議していかなければならない問題のはずなのである。
賛成する意見はあるが……。
実際に指名打者制度導入には、巨人以外にもセ・リーグのチームで賛成の球団は少なからずある。
FA制度の人的補償の問題でもソフトバンクの三笠杉彦GMらが原監督の提言の一部に賛成の意見を持っていること、楽天・石井一久GMも人的補償の問題点を訴えていることなども一部の新聞が報じている。
ところが現実はちょっと違った。
原監督の提言は、そうした問題の本質ではなく表面的な部分ばかりが取り沙汰されてしまった。