井上の対戦相手は誰に？

　日本のファンが最も気になるのは、井上の次戦の相手が誰になるのかという点に違いない。

　WBO王者ジョンリール・カシメロ（フィリピン）、WBC王者ノルディーヌ・ウバーリ（フランス）が有力候補として挙がっていたが、12月中旬までにIBFが同級1位マイケル・ダスマリナス（フィリピン）との指名戦を義務付けたために、混沌とした感があった。IBFは指名試合には非常に厳格なだけに、井上も半ばやむなしでダスマリナスを相手に選ぶと考えた関係者は多かったのではないか。しかし――。

「その件に関してはIBFから許可が下りました。ウバーリかカシメロと統一戦をするのであれば、IBFの指名試合を先送りにできます。その特例が認められるのは対立王者と統一戦を行う場合だけです」

　このアラムの言葉が真実であれば、井上本人が名指ししたカシメロとの来春の激突が可能になったということ。契約初戦の盛り上げを狙うトップランクとしても、いきなりの統一戦挙行は望むところだろう。

　もちろん交渉は生き物なだけに、結局はIBF指名戦をこなす流れになることも考えられる。あるいはIBF王座の剥奪覚悟で他の相手を選ぶこともあり得る。ただ、目標に掲げる統一戦の早期実現というオプションが見えてきたことは、井上陣営には朗報に違いない。

井上はアラムにとってもチャレンジ。

「あれほどのパワーを持つバンタム級の選手は、誰も見たことがない。ESPNのバックアップも受け、井上の試合前後には様々な関連プログラムで盛り上げていくつもりです。遠からずアメリカでも馴染みの選手になるでしょう。ワシル・ロマチェンコ（ウクライナ）、クロフォードと同じように、アメリカでも大きなファンベースを持つ選手になるように井上を後押ししていきたいと考えています」

　井上のアメリカ本格進出は、アラムにとっても新たなチャレンジのスタートである。アメリカでは馴染みの薄い軽量級で、日本のモンスターをどうやって呼び物に育てていくか。どんな形で売り出し、どのようなマッチメイクを用意していくか。文字通り百戦錬磨のプロモーターの手腕が、ここで改めて問われることになる。

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