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全日本選手権でよもやの逆転負け。
空手・植草歩が流した覚悟の涙。
posted2019/12/12 19:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
心の隙があったのか。あるいは技術なのか。止めどなく流れる涙は、頂点を目指すがゆえの自問に見えた。
体重無差別で競う全日本空手道選手権の個人戦が12月8日に群馬・高崎アリーナで行なわれ、東京五輪の組手女子61キロ超級で金メダルを狙う植草歩(JAL)が、決勝で齊藤綾夏(AGP)に逆転負けを喫して、5連覇を阻まれた。
4歳下、23歳の齊藤との一戦は、植草が先取点を奪ったものの、試合の中盤に上段蹴りで逆転を許し、最後は4-6で競り負けた。
「(ポイントを)先取した段階でいつも自分が勝つ流れだった。もう勝てるなという自信があったので、まさかあの接近戦で蹴りを食らうとは。今までもなかったし、自分のミスがあったなと思っていました」
上段蹴りで3点を取られて逆転された瞬間のことを聞かれると、厳しい表情を浮かべた。
油断? そう尋ねられると「油断というか、そこが自分の弱さだと思う」と、負けを正面から受け止めた。
五輪有力候補の多くが欠場したが……。
12月1日に決勝のあったプレミアリーグ・マドリード大会から3日に帰国したばかりの強行出場で、万全の調子ではなかった。実際、マドリード大会に出ていた組手の五輪有力候補たちの多くが欠場した。
しかし、植草には全日本選手権に対する強い思いがあった。ひとつは子どもたちやファンに空手の楽しさや自分の強さを見てもらいたいという思い。
そして、不調だった19年に区切りを付けて、良い方向へ変化していくためのきっかけとしたいという思いだ。むろん、5連覇への思いもあっただろう。