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岩佐亮佑に迫るアメリカンドリーム。
背水の陣で見せた緻密さと左パンチ。
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byEmilee Chinn/Getty Images
posted2019/12/12 11:40
2階級制覇を狙うマーロン・タパレスにKO勝ちした岩佐亮佑。ブルックリンのリングで強烈なインパクトを見せつけた。
「最後のチャンス」を掴んだ岩佐。
2015年、英国のブリストルで行われたIBF世界バンタム級暫定王座決定戦ではリー・ハスキンス(英国)に6回2分10秒TKOで惨敗。2017年9月には小國以載(角海老宝石)との日本人対決を制してIBF世界スーパーバンタム級王者にはなったが、2度目の防衛戦でTJ・ドヘニー(アイルランド)に敗れ、王者としての存在感は生み出せなかった。
また、不運もあって、アメリカ進出も成功してきたとは言えない。2016年11月にはコネチカット州でShowtimeのメインイベントとして挑戦者決定戦を行うはずが、対戦相手の体重超過でやむなくキャンセル。今年2月にはセサール・ファレス(メキシコ)に負傷判定勝ちでようやく米国初勝利を挙げたが、ノーテレビの試合とあって注目度は低く、試合内容でもインパクトは残せなかった。
そんな経緯もあってか、今回のタパレス戦はShowtimeのトリプルヘッダーには組み込まれたものの、期待度が大きいとは言えなかった。岩佐が自ら「最後のチャンス」と述べた背水の一戦でも、日本から取材に訪れたメディアはゼロ。ファンも大方が“タパレス有利”と見ていたようだった。
鋭いジャブと的確なボディ。
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その予想通りに岩佐が敗れていたとすれば、通称“イーグル・アイ”のキャリアは煮え切らないままほとんど幕を閉じていたのかもしれない。
しかし――。東海岸の新たなホットスポットとなりつつあるバークレイズセンターで、岩佐が展開したボクシングは見違えるように逞しいものだった。序盤こそタパレスのトリッキーなパンチを浴びたものの、3回以降は鋭いジャブと的確なボディ打ちで反撃。3回には頭がぶつかって相手が倒れたのがダウンと判定される幸運もあり、徐々にでも確実にペースを掴んでいった。
8回には強烈な右フックを浴びてヒヤッとさせられるも、その後に鋭いジャブからコンビネーションパンチを連打。タパレスは顔面の腫れも激しくなり、岩佐はここで完全に主導権を握った。