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岩佐亮佑に迫るアメリカンドリーム。
背水の陣で見せた緻密さと左パンチ。
posted2019/12/12 11:40
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Emilee Chinn/Getty Images
「負けも将来に繋がる」という考え方は、スポーツ界にはびこる陳腐なクリシェ(決まり文句)に過ぎないと思う人もいるかもしれない。
プロスポーツでは当面の試合に勝った方が良いに決まっているし、負ければもう2度とチャンスを貰えない選手もいる。しかし、手痛い挫折が糧になることが本当にあると分かりやすい形で示したのが、12月7日に行われたIBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦だった。
ブルックリンのバークレイズセンターで、元IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑(セレス)が2階級制覇を狙ったマーロン・タパレス(フィリピン)に11回1分9秒TKO勝ち。中盤ラウンドからペースを掴み、最後は強烈な左ストレートでダウンを奪っての鮮やかなKO勝利だった。
岩佐がタパレスに完勝した意味。
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「自分の100%を出せたかどうかは別にして、このリングで白黒をはっきりさせて、倒せて勝てたというのは、ボクシング人生の中でも一番嬉しかったですね。それぐらい嬉しかったです」
会心の戴冠劇のあと、リングを降りた29歳の岩佐は笑みが抑えきれない様子だった。実際に暫定ながら王座に返り咲いたというだけでなく、プレミアケーブル局のShowtimeで全米生中継された中で、アメリカでも実績のあるタパレスに好内容で完勝した意味は大きい。目標とするWBA、IBF同級王者ダニエル・ローマン(アメリカ)との対戦に大きく前進し、再び米リングに呼ばれる可能性も十分にあるはずだ。
ここまでのキャリアを振り返ると、岩佐はプロデビュー直後にかけられていた期待に応えられていたとは言い難かった。