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「戦闘マシーン」と「良き父親」。
井上尚弥が持つ正反対の2つの顔。

posted2019/12/01 20:00

 
「戦闘マシーン」と「良き父親」。井上尚弥が持つ正反対の2つの顔。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

「アリ・トロフィー」を手に写真撮影に応える井上。その肩に手を掛ける大橋会長は「尚弥のタフネスを証明できた」と胸を張る。

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前田衷

前田衷Makoto Maeda

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Asami Enomoto

 試合前の期待値がトリプルA級の黄金カードが、実際にいざフタを開けて、内容もトリプルA級だった……というのはそれほど多くない。期待外れに終わることも珍しくないのだ。

 その点井上尚弥がノニト・ドネアを下してWBSSバンタム級トーナメントを制した「11.7さいたまスーパーアリーナ」は、まさにトリプルA級として記憶されるに相応しい試合だった。

 観戦した人々から「期待した以上の好ファイトだった」「今年の年間最高試合賞間違いなし」「数年に一度あるかないかの好勝負」という声を聞いた。

 大箱のさいたまスーパーアリーナ(2万2千人)を会場にし、リングサイド券を通常の倍の10万円に設定した大橋秀行・大橋ジム会長の強気には最初驚いたものだが、チケットは前売り開始間もない段階でソールドアウトになった。

 井上はこれまで強打とテクニックに関しては海外でも高評価を得ていたが、この日の試合でさらにいくつもの評価を高める能力を証明してみせた。打たれ強さと強靭なハートは特に印象的だった。

知り尽くした相手、想定外の流血。

 今回はお互いが手の内を知り尽くした同士の対決だった。

 知られるように井上は高校生の頃からドネアに憧れ、ボクシングのテクニックを盗んだとも明らかにしている。ドネアも昨今の井上の活躍をリスペクトし、どんなボクシングをするかも熟知している。

「どんな想定外のことが起きても、対応できるよう練習しています」と言ったのは、試合前の井上だった。相手のノニト・ドネアが仕掛けてくるかもしれない攻撃に対して、あらゆる対応策を想定しているというのだ。

 しかし、2回のアクシデントは想定外だったろう。

「ボディーにくると思ったら、上だった」というドネアの左フックを右目に受けた。目の上をカットして出血。初めての体験だった。

【次ページ】 ドネアでも耐えられなかった左ボディ。

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