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『ザ・ロイヤルファミリー』
モデルの想像も楽しめる、
馬と人間の『継承』の物語。
text by
大和屋暁Akatsuki Yamatoya
photograph bySports Graphic Number
posted2019/12/11 07:00
『ザ・ロイヤルファミリー』早見和真著 新潮社 2000円+税
『継承』という言葉はこの物語のキーワードであり、同時に競馬の醍醐味でもある。血統という言葉は親から子へ、子から孫へとその能力が継承されることに他ならないからだ。そしてそれは馬だけではなく人間にも当てはまる。と、Numberなので格好よくしなければと思い、堅苦しい言い方をしてしまいましたが、あながち間違っていないかと思われます。早見さんも恐らくそこが面白いと思っているのでこのタイトルにしたのでしょう。
ここで自己紹介をさせて下さい。僕の名前は大和屋暁、脚本家でありJRAの馬主をやっております。
強い競走馬を生み出すために、まず真っ先に考えるのは血統です。繁殖牝馬を所有している人間は、母馬の血統から最適と思われる種牡馬を選び出し種付けを行います。母馬がどんな馬か、例えば短い距離が得意だったならば、そんなスプリンターな彼女にどんな父親を配合すればどんな仔馬が生まれてくるのかをイメージします。スプリント能力に磨きをかけるのか、適応距離を伸ばしたいのかによっても、相手は変わってきます。そして、早熟血統や晩成血統、敢えて近い血を配合するインブリードや、相性が良いと言われているニックスなんかを意識しつつ配合相手を決めるのです。さすがに人間の場合はそんなことはしませんが、親子というのは似るものです。父や母から継承されたその才能、良い所が似ればよいのですが、似て欲しくないところまで似てしまうこともよくある話でしょう。