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浦和在籍5年半でJ公式戦出場ゼロも、
ファンと同僚に愛されたGK岩舘直。
text by
佐藤亮太Ryota Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/12/05 11:30
2019年の第32節川崎戦でベンチ入りした岩舘直。公式戦出場こそなかったが、準備を怠らなかったからこの場にいられたのだ。
榎本も西川も称える実力と人柄。
約束の半年が過ぎ、岩舘は水戸に戻るとばかり思っていたが、期限付き移籍が延長となった。
そこには練習への姿勢、普段の振る舞いを見たミシャから残留の“鶴の一声”があったから。その事情を岩舘に伝えた土田コーチは「おまえ、わかっているな」とさらなる奮起を促したそうだ。
自身の課題に向き合う姿勢。この姿にチームメートのGKも思うところがあったようだ。
例えば、昨季まで在籍していた榎本哲也は「あいつは早くレッズを出て、違うチームに移った方がいい。あいつはうまいし、できるんだから」と話していたことがある。
正GKである西川周作は「人柄の良さ、何ひとつ文句を言わず、練習に取り組む姿勢。チームのために行動してきた選手」と語った。ここ最近は練習で1対1のシーンを何度も止めるなど、成長の跡は確かに見えていた。
しかし西川に加えて福島春樹といった層の厚さに阻まれ、公式戦出場のない岩舘に契約延長オファーが届くことはなかった。
「過大評価すぎ!」と笑いながらも。
それでも大槻毅監督は、こんな風に岩舘の貢献度を評価していた。
「彼のプロフェッショナルな姿勢、チームに対して貢献しようとする努力の姿勢、ケガをしたときの過程も見たが、彼のすばらしい人間性というのは、クラブにとって大きな財産。彼がいたことが大きな力になったと本当に思う」
周りの声に岩舘は「過大評価すぎ!」と笑いながらも、こう続けた。
「この5年半、たいてい僕が最後にグラウンドを上がっていました。そこで見た景色が思い浮かびます。練習して、それを終わってリフティングゲームをしたり……やっぱりサッカーは楽しいし、グラウンドに長くいたいですからね」