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山本と島田、2人の後輩たちが語った、
王者・羽生から受けた大きなインパクト。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2019/11/28 19:00
NHK杯に出場した山本、羽生、島田。大会中の会見で羽生は「グランプリ(シリーズ)だからこそ感じられるものってたくさんある」と2人にエールを送った。
羽生「常に強くないといけない」
山本、島田に多大な影響をわずかな時間で与えた羽生自身も、印象的な言葉を語っている。ショートプログラムを終えての記者会見での言葉だ。
「僕も人間なので、弱いときはすごく弱いです。ただ、皆さんが強い自分の印象を強く持っていてくださることで、僕も常に強くないといけないと思っています。ファンの皆さんや、スケートを見に来てくださる方が、『羽生結弦はこうだよね』っていうのを期待してくださるからこそ強くありたいと思います。それがときにはプレッシャーになって、弱い自分が露呈してしまうきっかけにもなることがあるんですけど、でも、そのプレッシャーがあるから強くありたいと思うんですよね。
多分、人より人の何倍もプレッシャーを抱えていますし、僕自身、みなさんに強いと思われているからこそ、自分はすごく弱いと思ってしまうんですけど、だから、弱い自分を見せたくないなとすごく思っています。強くありたいとすごく思っています」
さらに、試合を終えた翌日もこんな言葉を残した。
「あの……僕の中で9歳の自分とずっと戦っているんですよ。9歳で初めて全日本ノービスを優勝したときの、もうなんか自信しかない、自信の塊みたいな自分がいて。そのときの自分にずっと、『お前、まだまだだろ』って言われているような感じがしてるんですよね。だから、そこまで行きたいんですよね。自信の塊みたいな。
あの頃の、何だろう。だんだん大人になっていくにつれて、いろんな言葉とか、いろんなものごととか、社会のルールみたいなものに、やっぱり縛られていくじゃないですか。それに、だんだん自分たちが意味づけをしていく。子どもの頃って、そういうの何もなくて。ただやりたいことをやっていて、ただ自分自身が心から好きだなって思うことだったり……。自信があるなと思うことに関して、すごく素直でいられたと思うんですよね。それが今まったくできなくなってきていて」
「いちばん強いときの自分」とは。
9歳のときの自分が、今なお心に生きている。そして、ただ生きているだけではなく、郷愁にとどまっているのでもなく、現在を進む力になっていることを、次の言葉は物語っていた。
「でも、自分の根源にあるものはたぶん、そういう、なんか……、なんだろ、ほんとうに自分の心からやりたいもの、心から自信を持てるものというものをスケートで出したいんですよ。たぶんそれが、いちばん強いときの自分なんですよ。それになりたいって思って。
たぶんそれが最終的に、この今の大人になった自分と、その小さい頃の何でもできると思っていた頃の自分が融合したら、最終的に羽生結弦だって言えるのかなっていうふうに思っています。それがたぶん理想像なんです」
周囲の期待をときにプレッシャーに、でも力に変えて願う。「強くありたい」と。