第96回箱根駅伝(2020)BACK NUMBER
[平成ランナーズ playback vol.4]
設楽啓太「最後に見せたエースの背中」
posted2019/12/05 11:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Nanae Suzuki
秋が過ぎ、冬を迎え、その兄弟の名は徐々に駅伝ファンの間に知れ渡っていった。
設楽啓太と、設楽悠太。
東洋大学に進学した双子の兄弟は、駅伝シーズンを迎えるとロードで無類の強さを発揮し始める。最初に注目を集めたのは、兄である啓太の方だった。
2010年10月11日、大学駅伝デビューとなった出雲駅伝で1区5位の好走。続く11月の全日本大学駅伝では同じ1区で区間賞(当時のコースにおける歴代5位のタイム)を奪ってみせた。年が明け、迎えた第87回箱根駅伝、啓太はルーキーながら各校のエースが揃う“花の2区”に抜擢され、周囲を驚かせた。
啓太はここで区間7位と粘りの走りで、大会新記録での往路優勝に大きく貢献する。
酒井監督の頭にあった育成プラン。
もっとも、ルーキーの2区起用を決めた酒井俊幸監督の頭には、明確な育成プランがあったはずだ。エースの育て方というテーマで後に話を聞いた際、酒井はこう話している。
「設楽兄弟にしても、1年生の時からその路線で育てました。特に啓太は悠太よりも練習が積めるし、悠太も兄を目標としていたので。だから啓太はインカレも学生三大駅伝もすべて出たし、つなぎの区間に使ったことは一度もなかったですよね。東洋大のエースとしてチームを引っ張って欲しかったから、そういう意識付けをしてきました」
つまりは、本人の自覚を促すためのエース区間への起用であり、その後も啓太を2年、3年と続けて箱根駅伝の2区に抜擢したのはそうした考えがあってのことだった。