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金谷拓実が松山英樹に続くアマ優勝。
「“心臓がない”みたい」な逞しさ。
posted2019/11/20 11:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Kyodo News
身体よりわずかばかり大きい、真っ赤なチャンピオンブレザーに西日が溶ける。
プロツアーの表彰式に出るのは初めてではない。日本オープンの3回を含め、ベストアマチュア賞で列席したこと多数。とはいえいつも隣にいるはずの優勝者が、この日は他ならぬ自分だった。
静岡・御殿場での三井住友VISA太平洋マスターズで、東北福祉大に通う21歳の金谷拓実が初優勝を飾った。
アマチュアが日本男子ツアーを制したのは1980年の倉本昌弘、2007年の石川遼、'11年の松山英樹以来4人目(1973年のツアー制施行後)。直近の8年前、同じ東北福祉大の2年生だった松山もここ御殿場で歴史の扉を開いた。
2001年のワールドカップで、タイガー・ウッズが伝説的なチップインイーグルを決めた18番パー5。先輩と同じように最後はイーグルで締めくくったのも何かの縁かもしれない。
「“心臓がない”みたい」
身長172cm。体重は高校時代に比べて10kgは増えても72kgと、体格的に恵まれた部類には区分されない。大会4日間の第1打の平均飛距離(各ラウンド2ホールで計測)は284.38ヤードで全体の40番目だった。
それでいて、金谷のアマチュアキャリアはここ10年の男子選手を見渡しても抜きんでている。2015年に日本アマチュア選手権優勝、同じ年に日本オープンでローアマチュア獲得。どちらも17歳という最年少記録が残る。昨年はアジアパシフィックアマチュアを制して、今年のマスターズと全英オープンに出場した。ついには8月、R&Aが設定する世界アマチュアランキングで1位に座る、松山以来2人目の日本人選手になった。
その松山をして、金谷の強さは「メンタルでしょう」という。
ふたりは2年前の春、初めて日本でプライベートラウンドをともにした。今年は一緒にメジャーにも出場。試合での直接対決はないにしても、その様子を眺めてこう評す。
「いつも表情が変わらないじゃないですか。“心臓がない”みたい」
……。“強心臓”という定型句を封じられたことはさておき、彼の精神的な逞しさをより知るのは同世代のライバルたちである。