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山口俊「感触はいい」けど大苦戦。
プレミア12、公式球の“落とし穴”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2019/11/03 11:30
カナダ戦の2回、3点二塁打を許した山口。本番までに変化球の感覚を修正できるか。
ボールが軽いことで「飛ばない」。
ただ、その一方でミズノ社製のNPB公式球との違いを指摘するのは国際大会出場経験豊富な松田宣浩内野手(ソフトバンク)だった。
「スローイングに関しては非常に投げやすいボールですね」
野手目線で語る松田はその投げやすさの理由をこう説明する。
「ボールが少し小さくて軽い感じなんです。だから肘を使ってスッと投げられるしボールの伸びもある」
その反面で指摘するのが、ボールが軽いことで生まれる別の現象だ。
「僕は飛ばないと思います。バットもあまり軽すぎるとボールが飛ばないのと一緒で、ある程度まではボールも重さがあった方が飛ぶ。それと同じでこのボールは少し軽い分、飛ばないです」
12球のフォークのうち11球がボールに。
第1戦では通常ならフェンスを越えていたのではと思われる打球が、塀際でひと伸び足りずにフェンス直撃となる場面があった。4回の2得点の起点となった鈴木誠也外野手(広島)と吉田正尚外野手(オリックス)の放った2本の二塁打だ。
打った本人たちは「打球がちょっと低かったですからね」(鈴木)「風が逆風だったのもあると思います」(吉田)とボールの影響には否定的だったが、松田は微妙な軽さが2つの打球の飛距離に影響したとみている。
「僕は2つともいつも(NPB公式球)なら(スタンドに)いっていると思います」
松田の野手感覚で分かる微妙に小さく軽いというボールのスペックが影響したと思えるのは、カナダとの初戦に先発した山口のピッチングだった。
立ち上がりから決め球のフォークボールの制球が定まらずに、2回に自滅の格好で6失点。全59球中で12球のフォークを投げたが空振りが取れずに、11球がボールとなっては苦しい投球となるのは明らかだ。