フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「まるで神業」スケートカナダ圧勝。
羽生結弦自身は「まだ完成度30%」。
posted2019/10/30 12:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Derek Leung -ISU/Getty Images
「快調なときのユヅの演技は、ちょっと他に比べるものがない。ジャンプだけでなく、全てにおいて質が高いんです」
そう言ったのは、ソルトレイクシティ五輪銅メダリスト、当時4回転王と呼ばれたティモシー・ゲイブルだった。
10月27日に終了したGPシリーズ第2戦、スケートカナダで羽生結弦が見せたのは、まさにそのような演技だった。
4度目の挑戦での完勝。
フリー『オリジン』では、冒頭の4ループの着氷で余分なターンがついた以外、ほぼ完璧と言える演技だった。
軸の細い4回転や3アクセルが要所要所で音楽に合わせてピタリとはまり、かねてから本人が主張していた「ジャンプを振付の一部として跳ぶ」ということを、体現してみせた。
フリー212.99、総合322.59で、今季の男子最高点をマーク。平昌オリンピックの翌シーズンからリセットされた自己ベストスコアを更新させた。
今回のスケートカナダでは羽生を脅かすランクの選手は出場していなかったとはいえ、2位のナム・グエンに60ポイント近くの点差をつけた圧勝だった。
羽生はオリンピックを2連覇していながらも、スケートカナダのタイトルはまだ持っていなかった。
過去に3度出場したが、パトリック・チャンに次いで毎回2位に終わっていた。験が悪いので、もうカナダには出ないのではないか。
一時そう言われていた時期もあったが、3年ぶり4度目の挑戦でみごとなまでの完勝だった。