フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「まるで神業」スケートカナダ圧勝。
羽生結弦自身は「まだ完成度30%」。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byDerek Leung -ISU/Getty Images
posted2019/10/30 12:00
圧巻の演技でフリー212.99、合計322.59の自己ベストを記録した羽生。
「やってきたことが間違いじゃなかった」
「(9月初戦の)オータムクラシックで全然点数が出なかったこともありますし、スケートカナダで結構苦戦していたので、今回そういうことがあるかもと覚悟していたからこそ、演技として評価していただいたことで、やってきたことが間違いじゃないんだなと思った。自分の演技、自分のジャンプを評価していただけるというのは、ちょっと安心材料、自信材料になりました」
決勝の翌日、羽生は報道陣に囲まれてそう口にした。
シーズン初めに出場している初戦のオータムクラシックでは、毎回試行錯誤して来た。今年も総合279.05と羽生にしては低いスコアで、しかもフリーでは4回転で回転不足が取られるなど、予想外の評価もあった。
だがこのスケートカナダでの目標は、ノーミスで滑ること、300点越えをして勝つことなどもあげてはいたが、それだけではなかったという。
「高難易度のジャンプに偏ってきた」
「オータムの時みたく、なんかがむしゃらにひたすらノーミスがしたいっていう感じではなくて、本当に1つ1つのステップを踏みながら、まず最初のサルコーであったり、その後のスケーティングであったり、アクセルの入りであったりと、段階を踏んできれいなジャンプを跳べたらいいなっていう風に思った上でのノーミスを目指したいっていう気持ちです」
羽生が言葉を探しながら語った要点をわかりやすくまとめてみると、単にジャンプをノーミスできめるだけではなく、プログラム全体を大事にして仕上げたい、ということなのだろう。
このところ、4アクセルの話題ばかりが先行しがちな羽生だったが、自分の武器は単に難易度の高いジャンプを降りるだけではない、と再認識したのだという。
「自分の中でなんですけど、ちょっとずつ高難易度のジャンプに偏ってきたという印象があって、自分自身もそうならなくてはならないという感覚があって、アクセルもそうですしルッツもそうなんですけど……それにちょっとだけでもその流れを止めることができたのが今回の試合だったんじゃないかなと自分の中では感じているので、それが一番良かったです」