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「菊花賞は武豊で買え」を再び証明。
ワールドプレミアと最年長記録樹立。
posted2019/10/21 11:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
節目の第80回を迎えたクラシック。有力なディープインパクト産駒。その鞍上は武豊……ということで思い出されるのは、武のキズナが制した2013年の日本ダービーだ。それが武にとって、自身の持つ史上最多記録を更新するダービー5勝目となった。
あれから6年。ディープインパクトが7月30日に世を去ってから初めて行われたクラシックが、第80回菊花賞(10月20日、京都芝外回り3000m、3歳GI)であった。
それを制したのは、武が操る3番人気のワールドプレミア(牡、父ディープインパクト、栗東・友道康男厩舎)。武は同レースの最年少優勝記録と最年長優勝記録両方の保持者になったと同時に、史上初の昭和、平成、令和の3元号GI制覇をなし遂げた。
武はワールドプレミアを、スタートから積極的に出して行った。「いい枠だった」という5番枠を利し、好位から中団の内にポジションを取った。
1周目の3、4コーナーで外の馬に前に入られ手綱を引く場面があったが、それでもワールドプレミアはエキサイトすることなく、1番人気のヴェロックスをマークするような位置で脚を溜めた。こうしてギリギリのところで折り合わせる技術は武ならではのものだ。
武が仕込んでいた「菊花賞仕様」。
2周目の4コーナーで、武は内を回りながら、前があくタイミングをはかっていた。京都の芝外回りコースで行われる中・長距離線の直線入口では馬群がバラけることが多い。当然これも織り込み済みだっただろう。
ワールドプレミアは、水が流れるように加速して直線に向き、前の2頭の間のスペースを突いた。武は、阪神芝外回りで行われた前走の神戸新聞杯(3着)でも、3コーナーから加速して、流れるように外に出ながら直線に向くという「菊花賞仕様」の走りを仕込んでいた。
外を回ったヴェロックスと馬体を離して並走する格好になったが、あえて馬体を併せようとはせず、左ステッキでワールドプレミアを叱咤した。
ヴェロックスのさらに外からサトノルークスが追い込んできたが、ワールドプレミアはこれを首差封じて優勝。通算6戦目、重賞初勝利がGI制覇となった。