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菊花賞はヴェロックスが人気だが……。
「押し出された本命」不遇の歴史。
posted2019/10/19 18:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
先週の秋華賞同様、春の二冠馬が不在。さらに東西のトライアルの勝ち馬も出走しないという異例の状況下、クラシック三冠を締めくくる第80回菊花賞(10月20日、京都芝外回り3000m、3歳GI)が行われる。
皐月賞と、菊花賞トライアルの神戸新聞杯を勝ったサートゥルナーリアは翌週の天皇賞・秋に向かう。ダービー馬ロジャーバローズは屈腱炎のため引退。もうひとつの菊花賞トライアルであるセントライト記念を勝ったリオンリオンも屈腱炎を患い、放牧に出された。
2014年のワンアンドオンリー(1番人気9着)を最後に、5年連続、ダービー馬不在の菊花賞となってしまった。
故障などのやむを得ない理由で不出走となったケースもあるが、東京芝2400mを勝つために求められるものと、京都芝3000mを勝つために求められるものの違いが以前より大きくなった、ということか。
それを言うなら皐月賞の中山芝2000mを勝つために求められるものも大きく異なっており、だからこそ、二冠や三冠を獲得することには価値があるはずなのだが、言ってもせんないことなので、このくらいにしたい。
ヴェロックスの安定感は確か。
このメンバー構成だと、押し出されるようにヴェロックス(牡、父ジャスタウェイ、栗東・中内田充正厩舎)が圧倒的1番人気の支持を得るだろう。年明け初戦の若駒ステークスと若葉ステークスを連勝し、皐月賞2着、ダービー3着、神戸新聞杯2着と、世代のトップレベルでつねに上位争いをしてきた。
父がマイルから2000mで強さを発揮してきたジャスタウェイなので、ベストは中距離かもしれない。が、母の父モンズンは、自身芝2400mのGIを3勝しており、産駒にはブリーダーズカップターフなどを勝ったシロッコ、キングジョージVI&クイーンエリザベスステークスなどを制したノヴェリストといった、チャンピオンディスタンス以上で強かった馬たちが何頭もいる。
2011年のオークスで2着だったピュアブリーゼも産駒の1頭で、’17年のオークス馬ソウルスターリングの母の父でもある。
ヴェロックスは、どのレースでも、序盤は行きっぷりがよすぎるように見えるが、やがて鞍上の指示に従い、ぴたっと折り合う。
春の二冠で差のない競馬をしていたダノンキングリーが毎日王冠で古馬を寄せつけなかったことを思うと、信頼性は高い。