セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
初CLで連敗しても強いアタランタ。
主将が感心した“八百屋のお釣り”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/19 08:00
セリエAで好調な一方、アタランタはCLで壁にぶち当たっている。それを乗り越えられるかを見つめるのが、プロビンチアを応援する醍醐味なのだろう。
今年のリーグ戦成績はユーベ以上。
第7節を終了したセリエAでは開幕から5勝をあげ、首位ユベントスと2位インテルに次ぐ3位につける。クラブ史上58年ぶりのロケットスタートで、昨季から数えて2019年中に行われたリーグ戦26試合での勝ち点でいえば、王者ユーベすら上回る国内トップの57点を稼ぎ出している。
「俺たちの強みは昨季のチームが全員残ったことだ」(ゴメス)
パスを出して、動いて、崩す。前後左右に揺さぶって突く。高速機動サッカーは勝手知ったる仲間たちとなら目をつぶっていてもプレーできる。
DFマンチーニのローマ放出だけは抗いきれなかったが、代わりにMFマリノフスキやFWムリエルが加わって攻撃のバリエーションは増えた。
第1次改装工事の終わった本拠地スタジアムのこけら落としとなった第7節レッチェ戦も3-1と快勝。スタンドからは「(今季は)優勝狙おう!」との声も上がった。
主将ゴメスが八百屋で感心したこと。
在籍6年目を迎えた31歳の主将ゴメスは、ベルガモの町をとかく気に入っている。その理由については「働く人間への対価がきちんと尊重されているところだから」と語ったことがある。
「試合の翌日に俺が町をぶらつきながら、立ち寄った八百屋で野菜や果物をしこたま買い込んで、店主に『いくら?』と聞くとするだろ。彼は『昨日のゴール凄かったな! 70ユーロ32セントだよ』と言ってくる。端数の32セントはおまけしとくよ、なんて絶対言わない。俺はそうあるべきだと思うし、71ユーロを出して気持ちよくお釣りをもらうのさ」
至極当たり前の風景のようだが、ゴメスが3年プレーしたシチリア島では事情が違っていた。カターニャではレストランの勘定は、店主の方から結構ですと断ってくるのが常だった。南イタリアでは町のクラブの選手は有名人として優遇されていた。
だが、北都ベルガモでは、労働とその対価は死守すべきものと見なされる。アタランタは、そういう土壌の下で少しずつクラブとして成長してきた。
念願かなって地元自治体から買い取った自前スタジアムも、選手たちの売却益をこつこつと長年貯めてきた賜物だ。