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内村航平の同時期を上回る橋本大輝。
18歳の超新星が見せた可能性と涙。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakao Fujita
posted2019/10/20 19:00
種目別決勝の鉄棒ではG難度の「カッシーナ」などを次々に成功し4位に。「メダルには届かなかったけど、自分の中ではいい演技だった」と語った。
兄2人の下で育ったゆえの“弟キャラ”。
高校に入ってからはぐんぐんと成長した。中学入学時には150cmに満たなかった身長も164cmまで伸びて、次々と技をマスターしていった。
それに連れて食事の量も大幅に増加。今回の世界選手権では萱和磨とともにスタッフが驚くほどの量を食べて試合に備えたといい、チームから「大食い部屋」と呼ばれていたそうだ。
一方で“弟キャラ”も生きた。ドイツに応援に駆けつけていた母・祥子さんは、このように語っていた。
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「世界戦は初めてでしたが、兄2人がいるので年上の方たちの中に入るのは慣れているのだと思います。それに、今回は市船の先輩が多かったので、環境に恵まれました」
その言葉通り、持てる実力を十分に発揮し、国際審判をアッと言わせる世界デビューを飾った。それを雄弁に語るのは予選で出された点数だ。橋本はゆか、あん馬、跳馬、鉄棒の4種目に出場し、全4種目で日本チームの最高点を出した。
Eスコアが高い「美しい体操」。
そして、採点内容で光るのは、実施の正確性や美しさを示すEスコアが非常に高いことである。
予選では跳馬を除く5種目の中でチーム全体の最高となるEスコア8.883点をあん馬でもらった。そして、跳馬でも橋本の9.166点が日本のEスコア最高点。
終わってみれば橋本は、予選で演技した4種目全てで日本チームトップの得点を出した。これには水鳥寿思男子強化本部長も「期待はしていたが、期待以上だった。Eスコアで世界的に高評価を得たのは大きな収穫です」と興奮気味だった。
予選の結果により、橋本は各種目上位8番までの選手しか出られない種目別決勝に2種目(あん馬と鉄棒)で進んだのだが、これも快挙だ。なぜなら、種目別決勝に進出した全6種目の選手の中で18歳は最年少。10代の選手も橋本ともう1人がいるだけだった。