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内村航平の同時期を上回る橋本大輝。
18歳の超新星が見せた可能性と涙。
posted2019/10/20 19:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Takao Fujita
10月4日から13日までドイツ・シュツットガルトで開催された世界体操選手権で、日本の未来を明るくする強烈な輝きを放ったのが初出場の18歳、橋本大輝(市立船橋高校3年)だ。
内村航平や白井健三を欠いた今年の日本は、メンバー5人の大会開幕時の平均年齢が昨年の24.4歳から21.6歳へと若返った布陣。
初出場が5人中3人という、フレッシュとも未知数とも言えるチームでありながら2年連続で銅メダルを死守し、昨年は水をあけられたロシアと中国との差を縮めることができた背景には、新鋭の橋本が見せた質の高い演技があった。
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橋本は体操選手としてどのようにして育ってきたのか。また、今後の伸びしろはどうだろうか。
中学時代の全日本は最高が19位。
生まれは'01年8月7日、千葉県成田市。3人兄弟の末っ子として生まれ、小学校に入る前の6歳のころ、2人の兄(拓弥さん=東海大大学院、健吾さん=東海大3年)を追い、千葉県香取市の佐原ジュニア体操クラブに通い始めた。
ただ、年齢は長兄とは5つ、次兄とは3つ離れているうえに体操クラブには同学年の男子がおらず、小学生の頃は1人で練習しているような状況だったという。
中学生になると同学年の男子が1人入ったが、少人数に変わりはなく、中学まではあまり多くの技を習得できていなかったそうだ。けがも多く、そのため中学時代の全日本ジュニア選手権での最高成績は19位だった。
スポーツでは全般的に言えることだが、体操では特に周りにレベルの高い選手がいればいるほど上達しやすい。良いものを生で見ることが重要なのだ。
それが端的に出たのは、橋本が中学3年生のとき。強豪の市立船橋高校の練習に参加すると、その期間中に、跳馬の高難度技である「ロペス」に成功した。これは世界選手権の種目別決勝でスペシャリストが使うレベルの技であり、現在の橋本が持つ大きな武器でもある。