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世界陸上のメディアレースが面白い。
人生を反省し、選手を尊敬する800m。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAyako Oikawa
posted2019/10/09 19:00
出場した日本メディアが棒高跳び3位のステファニディと記念撮影。
「今までの選手への姿勢を反省し、謝罪したい(笑)」
選手に皮肉的な質問をすることで有名なイギリス記者は2分8秒のメディア英国記録を樹立。レース後すぐにインタビューに駆けつけると、勘弁してほしいという表情で声を絞り出すように応じた。
「残り200mがすごくキツくて『もうやめたい』と思いながら走った。レース後にトイレに駆け込んで戻したい選手の気持ちがよくわかった。
今回のドーハは、選手はレース後に階段を何段も上がってメディア対応をしなければならない。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。レース後に選手がすぐに取材エリアに来ないと、『何やってるんだ、さっさとくればいいのに』と毒づくこともあったけれど、もうそういう事は言いません。
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今までの選手への姿勢を反省し、謝罪したい(笑)。選手のみなさんはすばらしいです。支えてくれた家族、上司、選手みんなに感謝しながら、今後生活したい」
日頃の不摂生と選手の凄さを再確認する場。
お祭り的な要素もあるメディアレースだが、多くの人にとっては自分の生活を見直すきっかけと選手へ改めて大きな敬意を感じる場でもある。
なぜ暴飲暴食をしてきたのか。なぜもっと運動をしなかったのか。後悔先にたたず、とはよく言ったもので、どんなに後悔しても体に蓄積された脂肪はひたすら邪魔をする。選手達に対して「重そうな走り」とか「体が重そう」という表現を使うことがあるけれど、我々は感覚的な問題ではなく、物理的に体が重い。
メディアレース後に400m、3000m障害、400mハードルなどが行われたが、自分たちがモタモタと走ったスタジアムを選手たちはさっそうと駆け抜ける。キラキラ度数が普段よりも増していたのは気のせいだろうか。
たかが800m、されど800m。
人生までは振り返る余裕はないけれど、これまでの生活、そして報じる立場としての姿勢を考え直す人も多い。
機会があったら、ぜひみなさんも800m走ってみてほしい。きっと新たな世界が見えてくる、はずなので。