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ランナーズハイとは自分を映す鏡?
「ハイ」の達人・片山右京が語る事。
posted2019/10/03 07:00
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Wataru Sato
カメラマンがレンズを向けると、きちんとしまってあるシャツの裾をさらにズボンの中にぐいぐいと押し込もうとした。本人が気にしているであろう腹の膨らみは、はた目には全く分からないので「気になりませんよ、右京さん」と声をかけたのだが、そこはアスリートの矜持なのだろう。
「去年11月に着任してから全く運動してなくて、半年で8kgも体重が増えちゃって……」
ばつが悪そうに言うのだった。
元F1ドライバーの片山右京は現在、自らの名を冠した「Team UKYO」の代表としてレーシングチームと自転車チームを率いている。そして昨年11月には、東京オリンピック・パラリンピックの自転車競技の運営責任者となるスポーツマネージャーの要職に就いた。
本業とも言えるロードレースだけでなく、トラックやマウンテンバイク、BMXなど自転車が使われるすべての競技がテリトリー。その業務はスーパーアスリートの片山でも目が回るほどの忙しさだという。
毎日メールが700通、家に10日間帰れず。
組織づくりや予算案の策定、国際連合やIOCなど関連機関への対応や折衝など多岐にわたり、7月に行われたロードレースのテストイベントでは大会ディレクターとして運営管理車に乗り込み、緊急車両の配置の指示なども片山が現場で指揮を執った。
「会議も全部出席できないから、夕方に15分1コマでそれぞれ担当者から報告を受けて決定していく。議事録も読まないといけないから朝一番、6時に来てずっと資料を読んでますよ。それでも夕方になればメールが700通くらいたまっていて(笑)。コーディネーター(秘書)がメールを分けてくれてはいるけど、それに返信していると22時、23時。
こないだも家に10日間帰れなかったしね。23時半には銭湯がしまっちゃうから風呂に5日間入れなかったりとか。そんな生活が半年続いてます。本当にマンガみたいに忙しい」
今月もBMXのテスト大会などが控えている。これから1年。アクセルを緩めるタイミングはまるでなさそうだ。
「もうね、パラリンピックが終わった次の日からハワイに行ってゴルフして、ひとりで自転車こいでるイメージしかない。二度とこんなに忙しいのはごめんだって(笑)」