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不気味な鬼になった獣神が恐ろしい。
ライガーが脱ぎ捨てた仮面とスーツ。 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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photograph byEssei Hara

posted2019/09/26 19:00

不気味な鬼になった獣神が恐ろしい。ライガーが脱ぎ捨てた仮面とスーツ。<Number Web> photograph by Essei Hara

これまで見たことのない恐怖を見る者に刻みつける……ライガーの“鬼神”バージョン。

衰え知らずのライガーの負けん気。

「鈴木、オマエは越えてはならない一線を越えたってことだよ。オレのマスクを取って、なんの意味があるんだ? ライガーを怒らす? ライガーを本気にさせる? アホか。こういうことしなきゃ、オマエはオレを本気にさせられないのか? どんだけ力不足のくそレスラーなんだ」

 ライガーの怒りは収まらなかった。

「オマエは、一線を越えた。オレも何をするかわかんねえぞ。ライガーが怒ったらどうなるか知っているだろう。これは脅しでも何でもない。本気だ」

 ライガーの負けん気は人一倍だ。昔、若く血気盛んだった頃、大先輩の星野勘太郎にもまったく譲ることなく向かっていったこともある。

 神戸では8人タッグマッチ。ライガーは入場の花道で鈴木に奇襲を仕掛けたが、リング上で鈴木にイスでこっぴどく殴られてダウンした。

 また、屈辱的にマスクを剥ぎ取られてしまうのか、と危惧した。でも、ライガーは反則の急所蹴りを繰り出して鈴木の動きを止めると、かがむような姿勢でゆっくりとゆっくりと自らマスクを抜き取るように脱いだ。そこには髪の毛のない白いペイントの施されたもう一つの丸い頭と顔があった。

 不気味さが漂っている。

 もうずいぶん前のことだが、1996年10月20日、同じこの神戸ワールド記念ホールで、ライガーがザ・グレート・ムタと戦ったことがあった。

 あの時は白いスーツのライガーだったが、ムタに破り取られた白い仮面の下には白いペイントの顔があった。でも、マスクとペイントがデザイン的に同化していて、長い髪が頭に残っていたために違和感はなかった。この時、ライガーは鋭利な刃物で白いスーツを裂くとペイントが施された筋肉質の上半身を露出させた。果敢にムタを攻めるライガーがいた。ライガーはもう少しのところで、ムタの毒霧とムーンサルトプレスに敗れたが、伝説的な試合となった。

 あれから23年の時を越えて、また白い鬼が神戸に現れた。

【次ページ】 ライガーと鈴木の決着は凄惨なものに。

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