プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
不気味な鬼になった獣神が恐ろしい。
ライガーが脱ぎ捨てた仮面とスーツ。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2019/09/26 19:00
これまで見たことのない恐怖を見る者に刻みつける……ライガーの“鬼神”バージョン。
ライガーと鈴木の決着は凄惨なものに。
だが、今回、出現したのはもっとおどろおどろしいものだった。
白塗りの丸い頭と顔は得体の知れない不思議な生物にさえ見えた。その白い顔の持ち主が、体にぴったりと張り付いた窮屈なスーツを切り裂きながらゆっくりと脱ぐ仕草に、私は昆虫が脱皮する光景を重ね合わせた。映画の世界なら、エイリアンが生まれてくるシーンまで思い浮かべてしまった。
これがライガーの答えだった。それは鈴木が求めていたものとは異なるものかもしれない。
ライガーは反則負けを選んだ。鈴木は毒霧を浴びたが「鬼神」が現れたことが愉快で笑いが止まらないようだった。
決着戦は10月14日の両国国技館で行われることになった。60分1本勝負と発表されたが、どんなルールになるにせよ極めて凄惨なものになることは間違いない。
鈴木は「金網、ノーロープ、格闘技ルール、どれがいい」とライガーの気持ちを弄ぶように誘っている。
2020年1月の東京ドームでライガーが引退することは決まっている。だが、その前に行われるこの大一番は興味深い。試合結果によっては「腹をくくっている」という鈴木自身も消えてしまうかもしれない時限爆弾を抱えたことになる。