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不気味な鬼になった獣神が恐ろしい。
ライガーが脱ぎ捨てた仮面とスーツ。
posted2019/09/26 19:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
伏線はあった。だが、このタイミングか、と驚いたのも事実だ。獣神サンダー・ライガーが、そのマスクとスーツを脱ぎ捨てて、とんでもない鬼に変貌を遂げるとは思ってもみなかった。
9月22日、神戸ワールド記念ホールの話題は試合中に「獣神」から「鬼神」に変身したライガーに集中した。
メインイベントで、内藤哲也がジェイ・ホワイトに負けて、インターコンチネンタル王座から転落したことよりも、ホワイトが新日本のトリプル・クラウンを達成したことよりも「鬼神ライガー」の出現はインパクトある話題になった。
神戸の会場に集ったファンと「新日本プロレスワールド」で生中継を見ていた人々の多くが度肝を抜かれたことだろう。それは初めて見るおどろおどろしいものに突然遭遇してしまった特異な体験を誰かに語らずにはいられない、というほど、人の心を大きく揺さぶる事件となった。
ライガーは鈴木のケンカを買うことにした。
9月6日、後楽園ホールで鈴木みのるはテレビ放送席に解説で座っていたライガーを襲って、無理やりリング上に引きずり上げ、スリーパーホールドで締めてパイルドライバーでKOした。この一方的なアタックで始まった2人の抗争は激化していた。
9月16日の鹿児島で、ライガーは鈴木にマスクを完全に剥ぎ取られて「体のいいブランド物の包装紙に包まれた小っちゃい男」あるいは「30年間、インチキの包装紙をつけて来たヤツ」とまでののしられた。
プロレスラー人生のほとんどを否定されたような鈴木からのインチキ呼ばわりに、ライガーが黙っているわけがなかった。
ライガーは売られたケンカを買うことにした。