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大坂なおみ、喧騒から1年後の凱旋。
「大阪で勝つのイイんじゃないかな」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/09/20 11:50
和やかな表情で会見に臨んだ大坂なおみ。1年前の全米制覇時とは少し違う雰囲気を漂わせる。
コーチと別れただけで世界中が騒ぐ。
ロケーションではなくポジション、とはうまいことを言う。
この1年で大坂のポジションは随分変化した。1年前の大フィーバーぶりの頃は、まだ追われる立場の本当の怖さを知らなかった。
全豪オープンでグランドスラム連覇を遂げ、世界1位になって初めて追われるだけのポジションに立つ重圧を味わった。コーチと別れただけで世界中が騒ぎ、飛び交う憶測にさらされる存在であることを思い知った。
3月のインディアンウェルズで初めてディフェンディング・チャンピオンという立場を経験した。経験済みだからと自信を持って全米オープンに臨んだはずが、グランドスラムのディフェンディング・チャンピオンというプレッシャーはまた別物ということに気付かされた。
「いろいろな状況を経験して……」
「いろいろな状況を経験して、自分を慣れさせてきたと思う」
おそらく、必要なときはバリアを張って自分を守ることも学んだのだろう。
来日後初の記者会見が行なわれた日曜日、大坂はかなり不機嫌に見えた。コーチ解任とSNSでの恋人公開について質問が及ぶのはわかっていたことだが、淡白な受け答えに終始し、答えたくないことについては「パス1でお願いします」「そういう質問はこれまで何度も答えています」といった具合だ。時折作り笑顔は見せるものの<なおみ節>などどこへやらだった。
本人いわく「時差ボケで今朝も3時に目が覚めてしまったので眠い」とのこと。「こんな感じでごめんなさい。でも私は皆さんのことが大好きです」と一応のリップサービスで締めたが、その後に行なった練習では、この大会のために白い幕で目隠しをしたコートの使用を希望し、ファンもメディアもシャットアウトした。
あの日の状態では、大坂の代名詞にもなっている<ファンへの神対応>も無理だったから正しい選択だったに違いない。ちなみに、2回戦当日の練習と試合の後は、いつもと変わらぬ丁寧な対応ぶりだった。