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井上尚弥「見切ってしまえば……」
ドネア戦を前に、異例の公開練習。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byToshiya Kondo
posted2019/09/18 12:00
井上尚弥が公開練習で見せたのは、ドネア戦に向けて着実にチューンアップされたモンスターの姿だった。
ロマチェンコのパートナーを招聘。
この日、披露したマススパーリング(パンチを寸止めするマスボクシングとスパーリングの中間のようなもの)では、軽快なフットワークで前後左右に動き、左のジャブを軸にしながら、パートナーの顔面とボディに次々とパンチを散らしていった。
まずはディフェンスの言葉通り、パンチは一切もらわない。ジワジワと間合いを詰めながら一発を合わせようとするドネアと、それを翻弄しながらゲームを組み立てる井上の動きが目に浮かんでくるようなマススパーリングだった。
その後は9月16日から走り込みの短期合宿を開始し、横浜に戻ってからは再びスパーリング中心のトレーニングでドネア戦に向けて仕上げていく予定だ。
最近はスパーリングパートナーを海外から呼ぶのが恒例になっていて、今回はアメリカから東京五輪フェザー級代表候補で、フィリピン系米国人のジャフェスリー・ラミドを招いたことも書き加えておこう。
この選手、19歳ながらリング誌のパウンド・フォー・パウンド・ランキングで1位、つまり現役最強との呼び声高いワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)のスパーリングパートナーを約150回務めたという若き実力者。井上の意識の高さにこたえようと、陣営のサポートも万全なのだ。
新パートナーを迎えた井上は「ドネアにスタイルは似ていないけど、自分の引き出しの多さを試すにはいい」と頼もしいコメント。
試合まで2カ月弱。いまのところモンスターに死角は見当たらない。