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井上尚弥「見切ってしまえば……」
ドネア戦を前に、異例の公開練習。
posted2019/09/18 12:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Toshiya Kondo
WBA・IBF王者の井上尚弥(大橋)とWBAスーパー王者のノニト・ドネア(フィリピン)が激突するワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級決勝(11.7さいたまスーパーアリーナ)まで1カ月半あまりに迫った。
井上の弟、WBC同級暫定王者の拓真も出場する今回のイベントは、チケットがあっという間にほぼ完売し、近年のボクシング興行としては異例とも言える注目度を集めている。
現時点で井上は何を考え、何に重点を置き、来る大一番に向けて準備を進めているのだろうか。
9月6日、井上が横浜市内のジムにメディアを集めて公開練習を行った。この時期、井上が大々的に練習を公開したことはいままでにない。その狙いを本人は「盛り上がりをさらに増していきたいという思いがある」と説明した。
昨年9月、井上はWBSS初戦のフアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)戦で横浜アリーナを埋めているとはいえ、今回の反響はあのとき以上と言えるだろう。
リングサイドのチケットが10万円と聞いたとき、大橋ジムの料金設定は「かなり強気だ」と言われたものだが、これがあっという間に売り切れてしまうのだから驚く。
トーナメントのわかりやすさが響いた?
その要因を井上は「トーナメントの注目度の高さ」と分析している。4団体の世界チャンピオンが出場して真の世界一を争うWBSSというトーナメントが、日本のファンに分かりやすく、非常に受けが良かったという見方である。
言うまでもなく圧倒的なノックアウト勝利を積み重ねる“モンスター”井上への期待、決勝の相手が世界的に知名度が高く、日本のボクシングファンに人気の高いドネアであることも興行的価値を高めたと言えるだろう。
このように大きな期待を背負う井上だが、いつにもまして感じさせられるのは「油断やスキがまったくない」ということだ。