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甲本ヒロト×安美錦
土俵の上に「情熱の薔薇」を。
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/09/17 18:00
初めての相撲部屋訪問に、甲本ヒロトさんも大喜び。感激するも興味津々の甲本さんに、目を細める安美錦関だった。
甲本「前人未到の領域に足を」
甲本「でも、僕は今の安美錦関の姿を見ていると、むしろ『こんなやり方もあるんだ。こんな風にしていれば続けられるんだ』と可能性を感じます。だからこそ、前人未到の領域に足を踏み入れてほしい」
安美錦「でも、何度も葛藤は感じながらも、心のどこかで相撲を取り続けようと決めてるんですよね。妻も『好きなだけやりなさい』と言ってくれているので、やれるところまでやろうと思います」
甲本「力士になる条件はたくさんあると思うし、みなさんそれをクリアされて土俵に立っている。でも、音楽家ってそこに条件がないんですよね。他人が見て面白いと思えばデビューできてしまう。だからこそ、厳しい条件をクリアしている人たちを見ると背筋が伸びる思いがする」
安美錦「でも、逆に条件がないからこそ、すごいなと思いますよ。自分の中で完成度を上げないといけませんから。そういった意味では、僕も土俵の上では自分を表現したい、自分の相撲を出したいという思いでやっています。なんだかんだいっても国技館の土俵はいいですから(笑)。『あそこに立ちたい』と思いながら日々稽古に励んでいるんです」
甲本「安美錦関は勝負の世界にいながら、そうやって表現もされるでしょう。そういう人にはどうやっても勝てないな」
甲本「自分が楽しいなあっていう極限まで」
――おふたりはそれぞれステージや土俵に上がる際、どんな心構えで向かいますか。
甲本「最近はもう純粋に楽しんでいます。自分が楽しいなあっていう極限まで。『一番楽しいぞ、僕は』、『こんなに幸せなやつを見たことがあるか?』という気持ちで。それを馬鹿だなあと思えばそれでいいと思っているし、調子こいてるなと思われても、『調子こいてるよ。最高に調子乗っているんだもん』って」
安美錦「若い頃は楽しむことも大事にしていて、それが思い切り相撲を取ることにつながっていました。でも、今はとにかく土俵の上では思い切って相撲を取ろうということに尽きる。ただ、やはり勝ちたくなるし、負けたくない。その気持ちが強くなりすぎると、思うような相撲が取れない。難しいところですね」