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甲本ヒロト×元安美錦関の超対談。
音楽界と角界「理想の引退」の形とは。
posted2019/09/18 19:00
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph by
Tadashi Shirasawa
こなた、安美錦の大ファンだったという「ザ・クロマニヨンズ」の甲本ヒロト。現在は13枚目となるアルバム『PUNCH』(10月9日発売/アリオラジャパン)のリリースと10月下旬から始まる全国ツアーの準備で多忙を極める。
かつて『Number PLUS 疾風!大相撲』(2017年4月号)にて初顔合わせをしたふたりだったが、引退後に再会し、全3回のスペシャル記事としてNumberWeb上にて結実! それは互いの熱い思いを語り尽くした“大一番”となった。
――安美錦関が、先の7月名古屋場所12日目に引退会見をされました。まず、甲本さんが引退を知ったのは、どんな形だったのでしょう。
甲本「最初はテレビで……。あのぉ、ファンなんですよ(しみじみと)」
安治川「うははは、ありがとうございます!」
甲本「先場所、引退なさるとのニュースが流れた時は、ものすごいショックだったんですよね。ショックだったんだけど、『よほど考えられたんだろうなあ』というのがわかるから。『やりきったんだろうなあ』ということは、もうファンとしては納得せにゃいかんな、と」
安治川「はい、ありがとうございます」
甲本「喪失感はありました。『ああ、明日から俺、どうしよう』って」
安治川「そんなにだったんですか。申し訳ないです(笑)」
甲本「引退会見では、『もう一番取ってからの引退でもいいんじゃないか』という師匠の提案を退けて、『もういつ辞めてもいいようにやって来たから』との親方の一言が、すべてでした。素晴らしい!」
――2日目、新十両の対竜虎戦で古傷をケガし、車いすで運ばれての休場でした。「再出場の可能性も」と言われていましたが。
甲本「その時は、また戻って来ると思っていましたよ。だから、結局引退発表なさった時は、『本当に無理なんだなぁ』と思った。正直な話、本当に悔いはないですか?」
安治川「ないですね。悔いを残さないようにと、師匠も『もう1回土俵に上がってみないか』と言ってくれたんです。『思いを引きずってしまうと、辞めてからの次の人生に影響があるから』と。それで引退を師匠に申し出てから、一晩考える時間をもらいました。それでも、翌日もまったく考えは変わらなかったので『もういいかな』と思えたんです」
甲本「かっこいいです……」
安治川「2日目にケガした直後は、『何日目かで戻ろうかな?』と考えて、『アイシングして、この治療してあの治療して、中日までには出られるかな?』と計算もしていたんですけど、なかなか思ったように体が戻ってこない。それとともに、気合いがなくなったという言い方は変なんですけど――やる気はあるんですけど、尻込みしちゃうというか……。『ああ、終わりはこういうふうに来るのかな』と、そんな感じでした」
甲本「そうでしたか。見習いますよ!」
安治川「いえいえ!(笑)」