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大谷翔平、打率4割台から1割台も
「いい発見があれば」と前向きな訳。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKYODO
posted2019/09/07 08:00
今季は出場100試合で103安打を放つも、三振数も100を記録している。
大谷が目指す究極の打撃技術。
昨季の大谷は打席数を重ねるごとに「成長出来ている」と言った。まるでスポンジのような吸収力をもって、メジャーでも打席内で得た経験を糧に変えて行った。その結果として残した昨季の打率.285、22本塁打、61打点、OPS.925。首脳陣は今季「不動の3番」へと期待をかけた。
その中で大谷は「究極の打撃技術」の習得を目指し、シーズンを通して取り組んできた。
その技術は究極であるが故に、完全取得は容易いことではない。更に、相手は150キロ超のパワーボールと切れ味鋭い変化球をホームプレートの4隅に制球してくる強者たちだ。ハイレベルな戦いの中での高度なアプローチ。「良くなったり、悪くなったり」は本音だと感じた。
8月30日のレッドソックス戦。延長15回の末に6対7で敗れた試合で大谷は日本時代も含めキャリア・ワーストの8打席無安打、4三振を喫した。
「大谷は昨年と同じようには打っていない」
翌日、米メディアはブラッド・オースマス監督に聞いた。大谷の打撃はどうなっているのかと。すると指揮官は珍しくディテールに踏み込んで解説を始めた。
「彼は昨年と同じようには打っていない。ヒッティングポイントを以前にも増して体の中にして打とうとしている。打球に角度をつけるならばポイントは前の方がいい。それでも彼はボールを体の中に呼び込んで安打を打つ能力がある。彼はそのポイントで長打を打とうとしている」
究極の打撃技術――。
それは投球を引きつけるだけ引きつけ、体の中に呼び込み、あらゆる球種への対応力を上げた上で打球角度もつける。
相反する2つの融合に成功すれば、高打率だけでなく長打力にも確実性が加わる。だからこそ、究極。指揮官はそんな大谷の取り組みに理解を示し、こう言った。
「打者はいつだってスイングやメカニックをよくするために何かに取り組んでいる。大谷レベルの打者が『たくさんの細かいことがうまくいっていない』ということはあり得ない。彼は今ちょっとタイミングがあっていないだけだ。タイミングがずれているだけだよ」