“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「変わらずやり切る」湘南らしさを。
梅崎司は監督不在でも走り続ける。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/09/08 11:45
浦和戦では終了間際に勝ち点1をもたらすPKを決めた梅崎司。その経験値は窮地にいる湘南にとって貴重だ。
チームメイトに感じる頼もしさ。
「(浦和の)ボランチやDFラインのマークの受け渡しがあやふやだった。なので『パス、ドリブルどちらもいけるよ』と(ボールを)さらして、どちらも冷静に選択をした」と存在感を放ち続けた梅崎は、88分にビッグプレーを見せる。
杉岡のスローインを山崎凌吾がペナルティーエリア内左で受けた。ここで落としたボールを梅崎が受けるとDFに囲まれながらも中に仕掛け、エヴェルトンに倒されてPKを獲得したのだ。自らキッカーに名乗り出ると、浦和GK西川周作との駆け引きを制して、ゴール右隅に突き刺した。
その後も湘南は浦和を押し込んだが、1-1のドロー。結果自体は満足できるものではないだろう。とはいえチョウ監督不在の中で2戦連続で追いつく形での2引き分けと、勝ち点を積み重ねている。
「ものすごく成長を感じている。以前は先制されると苦しい展開に陥ってしまいがちだったけど、今は落ち着いて『自分たちのサッカーを続ければゴールを奪える』という意識が選手間で共有できているのは間違いない。チームメイトが頼もしくなっていると思います」
試合後、梅崎はこう胸を張った。
「一体感もまた、湘南の価値」
悲観することはない。今、自分たちの状況は間違いなく苦しいが、屈してしまっては湘南ベルマーレという財産に傷がついてしまう。
「若い選手はもちろん、選手ひとりひとりの責任感がどんどん強くなっているのを感じる。僕はそれを大切にするだけ。練習や試合中の厳しい声は僕にも届くし、こういう関係性こそ、チョウさんが作ってきた証。
それにね、今の湘南はスタジアムの雰囲気が良いんですよ。なんというか……選手とサポーターが呼応し合う雰囲気になってきましたよね。相手にはプレッシャーになり、僕らには『いけるぞ!』という空気を作ってくれています。メインスタンドもバックスタンドも一緒になって、一体感が凄い。これもまた湘南の価値だと思います」
俺たちは屈しない――。
残留はもちろん、1つでも上の順位に押し上げるべく。矜持を示すチーム最年長は、難局にあるチームを力強く牽引している。