“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「変わらずやり切る」湘南らしさを。
梅崎司は監督不在でも走り続ける。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/09/08 11:45
浦和戦では終了間際に勝ち点1をもたらすPKを決めた梅崎司。その経験値は窮地にいる湘南にとって貴重だ。
最初はちょっと困惑したが。
8月13日の報道後、クラブは練習を急遽非公開にしたが、その時も多くのメディアが梅崎に話を聞きに行き、彼のコメントはどの記事にも記載された。
「正直、こんなシチュエーションは今まで味わったことがないので、最初は僕もちょっと困惑しました。でも冷静に考えた時、こういう状況になると、絶対に自分の言葉が報道されるし、影響力を持ってしまう。メディアに対する言葉もそうですが、それ以上にチーム内で広がっている動揺にどう対処すべきか考えた時、自分が個人的な感情で動いてはいけない、と。
最初は選手ミーティングを開こうかと思っていましたが、それが果たして今のチームにとってプラスになるか。それを考えて『ちょっと待て』と思ったんです。必ずしも全員が同じことを考えているわけではありません。集まって話すことが時としてマイナスに働いてしまうこともある。自分の思いつきで動くのは違うと思った」
練習から100%で戦うことを大事に。
自分の立場を把握して、立ち振る舞いを考える。初めての経験の中で、彼が導き出した答えはシンプルなものだった。
「ピッチの中で示すしかない、と。練習から100%で戦い、気を引き締める。それは湘南に移籍してきた時から大切にしてきた信念です。ピッチ外で何が起ころうが、ピッチ内では常に緊張感を持っていく。球際を激しくいき、要求すべきところは遠慮なく要求し合う。
それはチョウさんが作り上げてきた、ベルマーレのスタイルであるからこそ、チョウさんがいないからと言って、おろそかになっては意味がないんです。『変わらず、やり切る』。これこそがチョウさんに教わったことだと思っている。僕がそれを100%表現できなかったら、今僕がここにいる意味がない」
プロサッカー選手である以上、自分の意思はピッチで放つ。取ってつけたようなリーダーシップではなく、パッションを持って先頭に立つ。怪我を抱えながらも、梅崎はこの難局の乗り越え方を自らの背中で示そうとしている。