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大坂なおみ、苦しんで全米初戦突破。
前回女王が真の女王になるために。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2019/08/28 20:00
初戦突破した大坂なおみ。第1シードという立場にあるが、楽しく全米の舞台に臨めているようだ。
こんなにナーバスだったのは初めて。
皮肉にも歴史は巡るのか――。一瞬、そんな思いが頭をよぎった、大坂の1回戦だった。大坂もあとでこう打ち明けている。
「(ディフェンディング・チャンピオンで第1シードという立場は)インディアンウェルズで経験済みだから大丈夫だと思っていたけど、全然違った。こんなにナーバスになったのは初めてで、結局最後まで克服できないままだった」
相手は世界ランク84位で大坂より年下の20歳アンナ・ブリンコワ。全米オープンは過去2度の出場で勝ち星がなく、グランドスラム全大会でも今年の全仏オープンでの3回戦が最高だ。全米、全豪と続けて制した大坂が負ける相手ではない。
0-3の立ち上がりから1-4と劣勢のまま進んだが、そこから5ゲーム連取で第1セットを6-4で奪った。
これだけの実力差があれば、いったん落ち着けばあとは一方的になることがよくある。そのパターンだろうと思ったら、第2セットも何度もブレークポイントを握られる危なっかしい展開。それらをしのぎながら5-5でラブゲームのブレークに成功し、次のゲームで40-30とマッチポイントを握ったが、そこから凡ミス連続でブレークバックを許した。
ブリンコワはすっかり調子づき、しぶとさを増してネットダッシュなど揺さぶりまでかけてくる。タイブレークをものにしたのはブリンコワだった。
落ち着いて見えるように振る舞おう。
この日の大坂は、ケルバーとの一戦の記憶から努めていたことがあったという。
「あのとき、彼女がすごくストレスを感じていることがわかった。そのことは私に味方してくれたと思う。だから私は同じように見られたくなかった。すごく落ち着いて見えるように振る舞おうと思った。実際はそうじゃなかったんだけど」
それが効いたのかどうなのか、嫌な流れで入った最終セット、何度か握られたブレークポイントのピンチでサーブ力を生かして切り抜けると、第4ゲームで先にブレーク。最後もブレークで締めくくり、終わってみれば6-2だったが、スコア以上に苦しい最終セットだった。
あのときのケルバーの心情を本当に理解したのは、今日が初めてだったのかもしれない。