野球善哉BACK NUMBER
強打・履正社が最後に見せた緻密さ。
奥川恭伸を崩した「大事なバント」。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/22 19:30
大阪勢としては2018年に続く夏制覇。大阪桐蔭の陰に隠れがちだった岡田龍生監督と履正社が、ついに高校野球の頂点に立った。
実はバント失敗が少なくなかった。
今大会の履正社を振り返ると、実はバント失敗が少なくない。
「履正社らしからぬ」とも感じたが、向上した選手のレベルに応じて新しい野球を実践していると感じる部分もあった。
今春のセンバツ1回戦で星稜と対戦し、奥川に3安打17三振と完璧に抑え込まれて敗れた悔しさが成長の起点になったのは事実だ。
個々のバッティングレベルは飛躍的に向上し、岡田監督も「奥川くんに負けてから、選手たちが肌で感じたことはたくさんあると思いますけど、作戦が変化したということはありません」と語っていた。
8回のチャンス、2度のバント成功。
そして迎えた決勝戦。
履正社打線は、序盤から星稜のエース・奥川をしっかりとらえていた。センバツで完敗した奥川からの11安打は、成長の証そのものと言えるだろう。
しかしこの日の履正社は、岡田のバントのサインに、しっかり選手が応えて見せた。
3-3の同点で迎えた8回表、先頭の内倉が二塁打で出塁すると、6番の西川に送りバントを命じた。見事にバントを成功させて1死三塁となり、7番・野口が勝ち越しタイムリー。
そしてたたみかけるように8番・野上聖喜が再び送りバント、9番・岩崎峻典のタイムリーで2点差に広げた。
岡田監督は言う。
「送りバントを使うところ、使わないところを、このチームに関しては割り切ってやることができた。一番大事なところで決めてくれましたから。あそこで失敗していたら負けていた。今日は大事なところで(バントを)使うと言っていましたから」