炎の一筆入魂BACK NUMBER
誰もが「天才」と呼ぶ西川龍馬。
1番打者として開花した広島の才能。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNanae Suzuki
posted2019/08/19 20:00
広島の1番・西川龍馬は7月にプロ野球史上初の4カード連続で先頭打者ホームランを記録した。
マスコットバットさえも握らない。
打撃では、月間20勝の球団記録を打ち立てた5月は5番として、後半戦からは1番として、安打を積み重ねる。スタメンに固定された5月以降の87試合で連続無安打は2試合が最長。出塁ゼロも11しかない。大型連勝と大型連敗を繰り返すジェットコースターのような戦いの中で抜群の安定感を誇る。
周囲が「天才」と表現する高い打撃技術には、独特な感性がある。
使用するバットの型は社会人・王子時代に出会った日本ハムの中田翔モデル。長さ85~85.5センチで重さは905グラムをずっと使い続けている。同じ型でも握った感覚がフィットしなければ、グリップエンドに「×」印をつけて練習用とする。
長さ、重さが異なるほかの選手のバットは「感覚がおかしくなる」と、握ろうとはしない。触るときも、片手で触るだけ。マスコットバットも握らない。
天性の“龍馬ゾーン”。
無駄のない打撃フォームも、シーズン途中に微調整した。打撃始動を「静から動」から「動から動」に変えた。軸足となる左足に残した重心を極端に右足へ一度移して再び左足に戻して打つようになった。スタメンに固定される前の4月30日時点で2割1分7厘だった打率をわずか19試合で3割に上げて見せた。
状態が良ければボール球でもヒットゾーンとなる。6月16日楽天戦では地面すれすれの低めボール球を左前打にすると、7月8日中日戦では内角高めの球を“大根切り”のようなスイングで右前打。7月24日中日戦でも高め直球を右翼席にたたき込んだ。
「勝手に反応してしまう」
狙って打ったものではなく、天性の“龍馬ゾーン”が存在するようだ。