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小平智、米ツアー実質2年目を終えて。
不本意な1年も「光は近づいてきた」。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2019/08/13 11:40
昨季を下回るランキング185位で米ツアー2年目を終えた小平智。だが、すでに来季に向けて復調の手応えを掴んでいるようだ。
「良くなってきた」ところでシーズン終了。
苦悩は今から2年前に始まっていた。まだ国内ツアーを主戦場としていた'17年の秋にドライバーのヘッドが割れてからフィットするクラブ探しに奔走し、日米の2勝はその道の途中にあったもの。
「どうにかしようと思ったけれど、どうにもできなくて今年のマスターズで“爆発”してしまった」
昨年に続いて踏んだオーガスタの地で、ついにはドライバーを2ホールしか使わない日もあった。
空を覆っていた暗雲が少しずつ薄くなり始めたのは、春の足音が静まった頃。メーカー担当者らと何度も協議を重ね、改めてクラブ選び、クラブづくりを見直してから「徐々に良くなってきた」という。夏場にかけてようやく予選を通る手応えをつかみつつあったときに、シーズンは終わりを告げた。
「つらい時期が来ると思っていた」
プレーオフシリーズ進出を逃したが、小平にはツアー優勝で得た来シーズンまでのシード権がある。
ジュニア時代の大きなタイトルはなく、日本の下部ツアーから地道に階段を上ってきたキャリアは、“雑草魂”に支えられてきた一方で「僕の人生ってけっこう浮き沈みが少なかった」という思いもする。2013年のレギュラーツアー初勝利から毎年優勝を重ね、賞金ランキングも上昇を続けた。
「年間で複数回優勝をしたいと言ったらできた。賞金王争いもできた('17年)。アメリカでも優勝できた('18年)。それなりの努力はしてきたけれど、周りの人を見ていると自分はちょっと順調に行き過ぎていて、『人生って、こんなもんじゃないだろうな……』と必ずつらい時期が来ると思っていた」
今いるのはまさにその予見していた時間。「でも、復調の兆しがある」とうなずいた。
「ここ3、4カ月くらいはやるべきことが見えてきた。トンネルにはいますけど……、うーん、でもいるのかな。光はだいぶ、出口はだいぶ近づいてきた感じがある」
取り戻しつつある昔の感覚が、失意から自分を引き上げてくれる。