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ダルビッシュはほぼ“転生者”?
20歳で想像した「全てを失う人生」。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/08/12 09:00
ダルビッシュ有のオールスター以降の成績は圧巻だ。その背景には、彼が20歳から積み上げてきたものがある。
まずはアンテナを広げ、その後取捨選択。
だから、無駄なことはなるべくしない。アンテナを広げて取り込んだ情報は、トレーニング法にしろ、トレーニング器具にしろ、調整法そのものにしろ、サプリメントにしろ、投球フォームや配球にしろ、徹底的な取捨選択が行われていった。
「どんなことにしろ、1回はとことんやっておかないと捨てる判断はできない。今までいろいろやって来たけど、その信者に一瞬ならないと本質は見えてこないから。だから、無駄なのか無駄じゃないのかの判断も速いんだと思う。
これ、どっちなんやろって時に、それをやって良くなる可能性が低いんであれば、スパッと捨ててしまう勇気が今はある」
32歳のPriority=優先事項は明確だ。
フィジカル的にも今が最高。
ダルビッシュは今季、通算では23試合に投げて4勝5敗、防御率4.36だが、前出の通り後半戦に限って言えば、防御率2点台に抑えている。前半戦は初登板で3回持たずに7四球を出すなど制球難に苦しんだが、後半戦は5試合でわずか2四球とその痕跡すら残っていない。
「最近は狙ったところに球が行かないだけでもイライラする。(今年の)最初の何カ月かはとにかくストライクが入れば、それで良かったっていうレベルだった。
あの頃はブルペンでも引っ掛けたり抜けたりが多くて、周りも『どうなってんねん?』みたいな雰囲気があったけど、今は真っ直ぐも変化球もほぼ狙ったところに投げられるし、あの頃とはまったく違う。今までのキャリアの中で一度もなかったぐらいいい」
自分のことについて語る時は慎重すぎるぐらい慎重な人が、自らそう言うのは珍しかった。
「100球ぐらい投げてても98マイル(≒時速157.71km)とか、出そうと思ったらいつでも出せる。そもそも日本では98マイルなんて出なかったし、フィジカル的にも今が一番いいと思う」