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ディープ急死はイギリスでも話題。
現役ラストラン、武豊との逸話とは。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/08/02 08:00
当時の「芝長距離部門」の世界ランク1位として臨んだ2006年の凱旋門賞では、断然の1番人気に支持された。
有馬、凱旋門賞でまさかの敗戦。
こうして日本競馬史上6頭目の三冠馬となったディープインパクトだが、続く有馬記念ではよもやの2着に敗れてしまう。小回りの中山競馬場で早目に抜け出したハーツクライを捉まえ切れず2着。結局、これが日本国内のレースでは唯一の敗戦となった。
しかし、それが実力的に劣っての敗戦ではなかったことを、古馬となったディープインパクトは自身で証明する走りを披露する。阪神大賞典を楽勝すると、続く春の天皇賞もレコードで走破。返す刀で宝塚記念も優勝し、勇躍、海を越える。
向かった先はフランス。ヨーロッパ最大の一番である凱旋門賞に挑戦したのだ。
日本のホースマンの、そして武豊騎手の悲願でもある凱旋門賞制覇は、日本競馬史上最強馬によってもたらされると誰もが思った。
しかし、競馬の神様の残酷さをこれほど思い知らされたレースがあるだろうか……。直前に体調を崩したディープインパクトは、少頭数の緩い流れでいつもとは違う形の競馬になったことも影響したか、まさかの3位入線。さらにはレース後には失格処分となってしまったのだ。
種牡馬としても5頭のダービー馬。
日本競馬界の枠を超え、日本国民から期待が懸けられていた凱旋門賞だけに、関係者は失意のどん底に落とされた。しかし、そんな思いを救ってくれたのもまたディープインパクトだった。
帰国初戦のジャパンカップを優勝し、名誉挽回。引退レースとなった有馬記念でも“飛び”、2着ポップロックに3馬身の差をつけ楽々とゴール。武豊騎手が両手で7本の指を立てて最後の写真に納まった。こうしてディープインパクトは通算14戦12勝、実に7つのGI勝ち、'05、'06年の2年連続年度代表馬という勲章を手に、種牡馬となった。
種牡馬としてもディープブリランテ、キズナ、マカヒキ、ワグネリアン、そして今年のロジャーバローズと既に5頭のダービー馬を出している。'12年に初のリーディングサイアーとなると、その座を'18年まで守り続けている。
さらに産駒がイギリス、フランスやオーストラリアでもGIを優勝。彼の産駒を求め、海外からもバイヤーが日本のセリに参加するほどになっている。