草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
「佐々木朗希のグラブ」は価値大。
スター球児と用具メーカーの関係性。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byAsami Enomoto
posted2019/07/29 11:10
決勝戦の登板回避が話題になった佐々木朗希。彼のような注目選手は“用具”の戦いも熱い。
「誰が使っているか」が重要。
筆者は確かめてみたが、全3誌の表紙に佐々木がつけているミズノ社製のグラブが写っていた。これを見た野球少年が「佐々木が使っているグラブ」にあこがれるのは当然のことだろう。
少年たちにとっては「どんな用具か」よりも「誰が使っているのか」の方が重要だからである。
昨年の夏なら根尾昂(大阪桐蔭)はゼット社製を使っていた。それ以前なら大谷翔平(花巻東)はアシックス社製だった。
古くは池田高校のやまびこ打線が猛威をふるっていた1980年代にはゼット社の金属バットに全国の野球少年が飛びついた。その年のスターがどのメーカーの用具を使っているかに大きな広告価値があるということは、スター候補に自社製品を使用してもらうことが各メーカーにとって極めて重要であるということだ。
野球道具は高い。グラブなら4万円超、バットは3万円前後、スパイクにアンダーシャツ、ストッキング……。学費はもちろんだが、球児をもつ家庭は、これにサプリメントを含めた栄養費、遠征費、場合によっては寮費の負担がのしかかる。「もしよかったら、弊社の製品を使ってみませんか?」という申し出のありがたみは、手に取るようにわかる。
そこから先は「高野連の目」や「学校や部の方針」「教育的見地」「企業のモラル」を忖度しながら金の卵との良好な関係を維持していくことになる。
スター球児と用具メーカーの関係。
スター球児と用具メーカーの関係を調べてみた。
まずは昭和の超強豪として甲子園優勝経験校のOBは「用具は自分で買っていましたよ。ただし、消耗度の強いキャッチャーとファーストのミットは部から支給という形でしたね」といたって健全だ。対してこれまた甲子園を何度も制した高校出身で、自身も優勝した現役野手ははっきりと言った。
「僕は中学時代から無償提供を受けていました。学校じたいはそういうことを禁止していたので、高校に進んでからはこっそりと。少なくとも学年では僕だけだったと認識していますが」。明確な青田買いというわけだ。その一方、やはり自ら全国制覇を経験し、ドラフト1位で入団した現役野手は「いただいたこともありますが、買っていた方が多かったですね」と話している。