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G1で狂犬達が限界知らずの死闘!
石井智宏とジョン・モクスリーの魂。
posted2019/07/23 11:30
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
新日本プロレスのG1クライマックスは、7月20日までの後楽園ホール3連戦が終わった。全勝は、Aブロックは4勝のオカダ・カズチカとKENTA、Bブロックは3勝のジョン・モクスリーだ。
大会トーナメントが順調に進んでいくなか、どうしても気になる1戦があった。
7月19日のメインイベントで行われたモクスリーと石井智宏の対戦。日米の「狂犬」たちの試合は「どこまでやるんだ」という激しい展開になった。
モクスリーの黒いトランクスには、有刺鉄線が描かれていた。これが意味するものは――リング上だけが試合場ではなく、“エニーウェア=会場すべてがファイティング・スペース”だということだ。イスもテーブルも何でもあり。モクスリーは使えるものはなんでも使う選手なのだ。客席から登場して、客席も蹴散らしながら、戦う。
「数カ月前まで、オレのレスラーとしてのキャリアは最悪だった。トイレの便器にぶち込んで流してしまいたいくらいうんざりだった。でも日本にやって来て、こうしてリングに上がることができた。アートを見せることができてうれしいよ」
試合後、モクスリーはWWE時代の過去を吐き捨て、自分のファイトを「アート」だと表現した。
モクスリーこと元WWE世界王者D・アンブローズ。
石井との、ゴツゴツしたなんでもありのぶつかり合いをモクスリーは楽しんでいるように見えた。試合後、頭突きが効いたのか、勝ってもフラリとよろけていたほどだった。それでも、笑みを浮かべて、石井に感謝していた。
「オレに何をやれとか、何をするな、とか指図できるヤツはこの地球上、いや、宇宙のどこを探してもいないんだ。それを決めることができるのはオレだけだ。オレは自分の命を懸けて戦う努力をしているんだ」
元WWE世界王者ディーン・アンブローズことモクスリーはマイクを手に絶叫した。