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ホンダとレッドブルが密になった日。
マクラーレン離別に知られざる経緯。
posted2019/07/21 17:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
イギリスGPの舞台となっているシルバーストーンは、F1の聖地といわれる。1950年にF1としての初のレースが行われたサーキットがここだったからだ。
そしてシルバーストーンはホンダにとっても、忘れられない場所だ。
1987年のイギリスGPでのこと。ウイリアムズとロータスにエンジンを供給していたホンダは、決勝レースで1位から4位までを独占した。これはホンダF1史上初であり、その後も成し遂げられていない唯一の快挙である。
2017年に聖地で行われた密談。
それから30年後の、2017年のイギリスGP前日。ホンダはこのシルバーストーンで、ある重要な会談を行う。それはホンダのマネージングディレクターを務める山本雅史(当時はモータースポーツ部長)とレッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコの密談だった。
なぜ、密談だったのか。それは当時、ホンダはマクラーレンにパワーユニットを供給しており、レッドブルはルノー製のパワーユニットを使用していたからだ。いわば、両者はライバル関係にあった。そのホンダとレッドブルが密談を行うのには、理由があった。
F1に復帰して3年目のシーズンを戦っていたホンダは、新しいコンセプトで設計したパワーユニットに手を焼き、本来のパフォーマンスを発揮できない戦いが続いていた。シーズンが開幕して間もなく、マクラーレンがホンダとの提携を解消したがっているという噂が流れる。
しかし、ホンダとマクラーレンとの間には契約があった。当時、マクラーレンでホンダとの交渉を担当していたある人物はこう話す。
「マクラーレンはホンダと3年+2年オプションの契約を結んでいて、われわれはオプション権を行使してさらに2年延長するかどうかを判断しなければならないときだった。われわれは契約を更新したかったが、それには条件があった。更新する年数は2年ではなく、3年ということだ。
なぜなら、成績不振に再び陥った'17年はわれわれにとって無駄な1年であり、ホンダは本来の契約を履行していないも同然だったからだ。2年ではなく3年にするというのは、その分の1年を追加するという意味だ」