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ウエイトリフティング男子復権の星、
糸数陽一が見据える「東京五輪で金」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2019/07/15 11:45
今年6月のオリンピックのテスト戦に臨んだ糸数。五輪と同じ会場で「最高のパフォーマンスをするイメージができた」と語った。
「終わってみたら、悔しさが大きい」
スナッチ134kg、ジャーク165kg、トータル299kgで銀メダルを獲得した世界選手権の直後は、「36年ぶりのメダルでうれしいです。日本人として久しぶりに表彰台に立てたのはうれしい気持ちです」とコメントしていたが、帰国後は様相が異なった。
「大会前はメダルを目標にしていたけれど、終わってみたら、悔しさが大きいです。やっぱり金メダルを目標にしていたんだなと思いました」
悔しさが募るのは、力をつけた手ごたえを得ていたことも意味していた。以来、世界一を目指し、自身のために、そして日本男子の期待を背負いつつ競技に取り組んできた。
「神の島」で強い身体を養う。
身長160cmの糸数は、沖縄県の久高島で育った。琉球王朝時代、神事が執り行なわれ、神の島とも呼ばれる島だ。この地で周囲を囲む海で遊び、島の中を走りまわり、強い身体を養っていった。
豊見城高校に進学後、ウエイトリフティングを始める。「(久高)島だったからこそだと思っています」と自ら語る身体を活かし、頭角を現す。2年生から2年連続で選抜、総体、国体の全国大会の三冠を達成。日本大学を経て、現在は警視庁に所属し、日本を代表する選手へと成長を遂げた。
そうして見えてきた世界一だから、なおさら、結果が残せなければ悔しさは募る。より高みを目指そうと進んできた。昨年は春から腰に痛みを抱えてきたこともあり、アジア大会は5位にとどまったが、今年に入ると、回復基調にあった2月、4月の大会で日本記録を更新した。
右肩の痛みもある中、7月6日に東京五輪のテスト大会を兼ねて行なわれた東京国際フォーラムでの日中韓友好大会にも出場。減量面などコンディションを考慮し、本来の階級ではない67kg級での戦いだったが、3位の成績を残した。結果云々よりも、オリンピックの試合が行なわれる会場を体感できたことが大きかった。