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ヴェルディ育ちが海外修行を経て。
東京V澤井「安西らの活躍は刺激」
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byTetsuro Kaieda
posted2019/07/14 08:00
東京ヴェルディに復帰した澤井直人。第23節からの出場となるが、チームを上昇気流に乗せる奮闘に期待したい。
初得点の顔面シュートは「当てたんです」
転機は、クリスマス休暇の直前に訪れた。トップチームに故障者が発生し、中盤の右サイドに穴が開いた。そこで、週に1、2回トップの練習に呼ばれていた澤井にチャンスがめぐってくる。
手には日本に帰るエアチケットを持っていたが、週末、ランスに連れていくから変更しろとのお達しだ。
「特別、その週の練習で調子がよかったわけでもなく、正直、18人目ですから出るチャンスがそれほどあるとも考えていませんでした。できれば、日本にはゴールの報せだけで、映像は流れてほしくなかったですね。
たまたま走るコースにボールがきて、身体に当たって入っちゃったように見えるでしょ? 違うんですよ。自分のところにボールがくると確信して走った。シュートのときに首を振ったら、バーの上に外しそうだったので直立した体勢で押し込んだ。当たったのではなく、当てたんです。あれも技術なんです」
澤井は力説するが、見かけほどタナボタの1点ではあるまい。卓越したスペースの使い手らしいゴールシーンだ。
厳しさに直面するも、語学は3カ月で習得。
以降、澤井はトップに定着し、さらなる厳しさに直面した。
「日本では、献身的に働いて攻守に貢献といった見方がありますけど、向こうにはそんな評価基準はない。攻撃の選手はゴールかアシスト。つまり、数字です。同じポジションであれば、数字を残している選手が使われる。全員が常にゴールのことを考えていて、そこに懸ける貪欲さが桁違い。そのあたりの自分の中にあった物差しは大幅に書き換えられました」
アジャクシオではめったにいない日本人ということも手伝い、サポーターの反応はダイレクトに届く。決定機を外した翌日、街を歩いていると「昨日の試合に負けたのは、おまえが決められなかったせいだ」と面と向かって言葉を投げつけられた。
「相手も笑いながらですけど、嫌味に対する返し方はわりと早く覚えましたね。本当にごめん、次はがんばるよと」
澤井は3カ月程度で日常会話をマスターし、その頃にはフランス語でインタビューを受けられるほどに語学は上達していた。