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ヴェルディ育ちが海外修行を経て。
東京V澤井「安西らの活躍は刺激」
posted2019/07/14 08:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
Tetsuro Kaieda
それは名もなき日本人選手がフランスで起こした、小さな、けれどもたしかな到達点を刻む事件だった。
2018年12月22日、フランス・リーグドゥ(2部)第19節、RCランス対ACアジャクシオ。1-1で迎えた69分、背中に14番を付けた澤井直人が投入される。
そして77分、右サイドからクロスが上がり、ヘディングの折り返しに合わせてボックスに侵入した澤井が、顔面で押し込むようにゴールネットを揺らした。初出場初得点の快挙だ。このゴールにより、ACアジャクシオは敵地で2-1の勝利を収めた。
同年8月、東京ヴェルディとアジャクシオとの間で締結された業務提携が契機となり、澤井の念願だった欧州挑戦は叶う。空路、羽田からパリに飛び、そこからさらにコルシカ島まで1時間半。ピッチに降り立ったのは、小さな空港に降り立った夏の日から、およそ4カ月の歳月が流れていた。
珍しい日本人への反応はさまざま。
地中海に浮かぶコルシカ島はナポレオン生誕の地と知られ、アジャクシオは島最大の都市。それでも人口は7万人に満たない、こぢんまりとした街だ。
「チームメイトの前で挨拶をしたときの反応はさまざまでしたね。コンニチハと明るく話しかけてくれる人がいれば、素っ気ない態度を取る人も。大して期待されてないことは自分でもわかっていましたが、コルシカ島でプレーする初めての日本人選手ということで、みんなが興味を持って接してくれました」(澤井)
そうして、セカンドチームでの鍛錬の日々が始まった。質量ともに濃密なフィジカルトレーニング。東京Vとは異なる戦い方、新しいスタイルへの適応。澤井の持ち場である右サイドハーフには、徹底して1対1での突破力が求められた。ボールが渡れば、あとは任せたと意図的にサポートを控える。
「まず、自分にパスを出してもらえるまで時間がかかり、そこからオフ・ザ・ボールの動き出しを周囲に理解してもらうまでにはさらに日数が必要でした。アジャクシオは2部では珍しくパスをつなぐスタイルだったので、やりやすかった部分もあります」