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セレソンを支える頼もしい主将。
36歳ダニエウ・アウベスの味わい。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byGetty Images
posted2019/07/06 10:00
ゲームメークもできるメッシだが、それをセレソンはダニエウ・アウベスを中心にチームで封じた。
「メッシとその他大勢」の状況。
ブラジルは速攻から2ゴールを決め、敗れたアルゼンチンもメッシやアグエロのシュートが惜しくも枠を叩いたが、この結果は妥当だと思う。
ひとつのチームとして戦ったブラジルに対して、アルゼンチンは「メッシとその他大勢」でしかなかった。
アルゼンチンのゲームは、メッシの気分次第で変わる。トップ下にいたと思えば、サイドに出たり、中盤の底に引いてボールを受けようとする。
たしかにメッシがボールを持つと、なにかが起きそうな気配が漂い、実際にチャンスも生まれる。だが、彼には決まったポジションがないため、味方は彼を探すところからプレーを始めることになる。これではテンポが上がらない。
セレソンは泥くさく戦った。
準優勝した2014年のワールドカップでは、マスチェラーノという中盤の指揮者がいたため、メッシもゴール前での仕事に専念できた。ところがいまのアルゼンチンには、マスチェラーノの役目をする選手がいない。
その結果、アルゼンチンのゲームは破綻した交通網のようになった。スカローニ監督は、ディマリア、ディバラと豪華なタレントを“全部盛り”して巻き返そうとしたが、混沌はむしろ深まるばかりだった。
アルゼンチンにとっては、走れない最終ラインも命取りになった。このことは昨年のワールドカップの敗因にもなったが、まったく改善されていなかった。ベテランのオタメンディは、目を覆いたくなるようなミスを連発。ガブリエル・ジェズスのドリブルに3人が翻弄された2点目は、アマチュアの守備を見るかのようだった。
メッシ頼みのアルゼンチンを破ったのは、ネイマール不在のブラジルだった。エースが欠場したことでチームとしてまとまった彼らは、だれもがしっかりと走り、泥くさく戦うことで大一番を制した。