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ネイマール不在も「メッシ、チャオ」。
コパ大一番を制したブラジルの組織力。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGetty Images
posted2019/07/05 11:00
異様な雰囲気の中、“メッシ封じ”を遂行したブラジルが。決勝の相手はグループステージで大勝しているペルーだ。
“ET”メッシはまたしても涙……。
カナリアイエローに身を包む多くのサポーターは、基本的にお祭り騒ぎが大好きだが、ことアルゼンチン戦に関しては、やはり敵意をむき出しにする。試合を決定づける2点目が決まった瞬間、今大会最多となる5万人以上の大観衆を飲み込んだミネイロンスタジアムには「エリミナード(敗退だ)」の大合唱が響き渡った。
5年前のW杯準決勝でドイツに1対7で敗れさったブラジル。その「ミネイロンの惨劇」と同じ舞台で不倶戴天の敵を2対0で下した直後、チッチ監督はメッシについて「スカローニ監督にも言ったがメッシはET(地球外生命体)、別格の存在だ」と言い切った。
しかし、そんな褒め言葉もむなしく、またしても代表チームで優勝に手が届かなかったメッシは、試合終了の笛を聞くとピッチに一人佇んだ。
真っ先に駆け寄ったのはチームメイトではなく、カゼミーロやかつての僚友、ダニエウ・アウベスだった。
一方、ブラジル人サポーターがそんな気遣いをするはずもない。ミネイロンスタジアムから帰途につく道中で「メッシ、チャオ(バイバイ)」のチャントが響き渡っていた。
南米の2大巨人の抗争史に刻み込まれた新たな1ページ。ネイマール不在の王国が、その底力を見せつけた。