来た、見た、書いたBACK NUMBER
ネイマール不在も「メッシ、チャオ」。
コパ大一番を制したブラジルの組織力。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGetty Images
posted2019/07/05 11:00
異様な雰囲気の中、“メッシ封じ”を遂行したブラジルが。決勝の相手はグループステージで大勝しているペルーだ。
ブラジル人もメッシ目当てで会場に。
19分、ガブリエル・ジェズスの先制点で幸先のよいスタートを切ったブラジルだったが、鉄壁のはずの守備陣が徐々にメッシに脅かされていく。
チームとしてのビルドアップに難を持つアルゼンチンゆえ、メッシが自陣近くでボールを受ける場面が散見。カゼミーロを中心に常に数的有利な状況を作り出しメッシを封じていたブラジルではあったが、30分にはメッシ自身が得たFKをアグエロが頭で合わせるとボールはクロスバーを直撃。
メッシ目当てのブラジル人も足を運んだミネイロンスタジアムで徐々に、メッシが本領を発揮し始める。
チアゴ・シウバとマルキーニョスによるPSGコンビを中心にした鉄壁の守備がこじ開けられる寸前だったのは後半12分のことだ。ラウタロ・マルティネスのシュートのこぼれ球に左足を一閃。完璧だったメッシのシュートはポストに嫌われた。
メッシ対ブラジル。こう言いたくなるほど、アルゼンチンの10番は、攻守両面で闘志をむき出しにピッチを駆け回った。
ペレの比較対象はもうマラドーナではない?
長らくブラジルでは史上最高のサッカー選手について「ペレかマラドーナ」で論じたものだが、近年では「ペレかメッシ」に比較対象が移行。サッカー王国も認める天才に何度も冷や汗をかかされたブラジルではあったが、メッシを見放したサッカーの神は、結局のところブラジルに振り向くことになる。
皮肉にも試合を決定づける2点目を演出したのはポルトガル語で「ジーザス」を意味する名を持つガブリエル・ジェズスだった。後半26分、メッシのボールを奪ってブラジルが必殺のカウンターを発動する。ガブリエル・ジェズスが左サイドを突破し、フィルミーノの今大会2ゴール目をお膳立て。
アルゼンチンに傾きかけていた流れを断ち切ったブラジルだったが、ネイマール不在を感じさせない攻撃の鋭さは、アルゼンチンにはない組織力が支えていた。