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サニブラウンの隣にいた「あの人」。
記録を支える兄貴的存在への信頼。
posted2019/07/02 11:50
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Tsutomu Kishimoto
「コーチに感謝しています」
レースを終えたサニブラウン・アブデルハキームはそう語った。
10秒02。
大会記録を0秒03上回る好記録。9秒台は出なかったけれど、2年ぶりの日本選手権タイトル、そしてドーハ世界陸上の切符を手にいれた。
メディア対応、表彰式を終え、今回の遠征に帯同したアントワン・ライト氏と対面。笑顔で喜びを分かち合った。
「あれ、いつもインタビューに出てくるコーチとは違うような……」
今大会、サニブラウンが同行しているコーチを見て、そう思った人もいるのではないだろうか。
「アントワン」と呼ぶ兄貴的存在。
今回、ヘッドコーチのホロウェイ氏から「サニブラウン、日本選手権優勝」の使命を受けて来日したのは、25歳のアントワン・ライト氏。
彼の肩書きは『ボランティアコーチ』だ。
フロリダ大学の陸上部でスプリンターだったアントワンは2017年に引退。その後、アルバイトをしながら大学の陸上部でコーチ修行と選手の指導を行っている。試合にもすべて同行し、サニブラウンにとって「信頼出来る兄貴」的な存在だ。
ほかのコーチは「コーチ+苗字」で呼んでいるが、兄貴のことは親しみをこめて「アントワン」と呼んでいる。
フロリダ大学陸上部には6人のフルタイムコーチがいて、ヘッドコーチのホロウェイ氏が男子スプリントを指導している。今大会も「できれば自分が帯同したかったけれど、ダイヤモンドリーグに出場するプロ選手もいるし、全米選手権もあるので、1週間以上空けるのは難しいから」と話し、秘蔵っ子のアントワンに大事な任務を託した。