ラグビーPRESSBACK NUMBER
早大ラグビーでの挫折を経て世界へ。
“コーチを教えるコーチ”って何?
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byMasataka Tara
posted2019/06/22 17:00
指導者による問題が相次いだ近年。今田のような「コーチディベロッパー」が日本のスポーツ界に果たす役割は大きい。
近鉄退団後、コーチディベロッパーの道へ。
2016年まで近鉄に7季在籍し、退団後はラグビー界のコーチのコーチ「ワールドラグビー・エデュケーター」の資格も得て、コーチディベロッパーの道へ。そのスキルを活かして、バスケ界、野球界へ活動の場を広げてきた。
「ワールドラグビーのエデュケーターは日本に20人くらいいるのですが、いろんな競技に関わっているのは僕だけかもしれません。競技の専門的な知識を教えているわけではなく、コーチングを提供しているので、どの競技でも大丈夫です」
あるプロ野球チームでは月に1度、ファームのコーチと1回45分の対話をする。中身は質問が中心になる。
「その時間はコーチのための時間なので、質問に時間を使います。ただ良い質問をしないと、良い答えが返ってこないと思っています」
たとえば今田が、次回までの取り組みを尋ねる。
コーチが、選手から意見を引き出すことを頑張ります、と答えたとする。
「『頑張ります』は良い返しではありません。具体的ではないので、『それはいつできますか』『毎日できますか』『全員とできますか』と突っ込んでいきます。深める質問、話題を広げる質問、狭めて最終決断をするための質問……。いろいろあると思っています」
良い質問を駆使して、良い返答を引き出し、コーチ自身の認識を深めていく。痛みをともなえば、それは成長したいコーチにとっては良い兆候だ。
今田が抱く大きな夢。
今田自身もコーチディベロッパーとして挑戦を続けたいと考えている。ラグビー界、バスケ界、野球界を股にかける男は、その柔らかい物腰からは想像しにくい夢を抱いている。
「世界一大きいクラブ、たとえばFCバルセロナとか、ニューヨーク・ヤンキースとか、そういうチームと契約してみたいなと思います」
大学でレギュラーになれなくても、コーチディベロッパーとしてなら、世界のビッグチームと契約できる。もちろんそのために痛みと向き合い、これからも成長を続けるつもりだ。